SNSは「不憫かわいい」であふれている

若者が「不憫かわいい」を感じる対象は、おぱんちゅうさぎだけではありません。実は、最近の若者トレンドは「不憫かわいい」ものばかりなのです。例を見ていきましょう。

まずは、「アグリーベイビーズ」。これは、伸縮性のある素材でできた赤ちゃんの人形で、TikTokから人気に火が付きました。赤ちゃんの頭をつぶしたり体を殴りつけたりして楽しむことが、若者の間で大流行。まさにキュートアグレッション欲を満たすアイテムです。

僕も購入し若者にならってグチャグチャにして遊んでみたものの、子どもを虐待しているようで、胸が痛みました……。でも、学生に言わせれば、「ひどい仕打ちを受けている様子が『不憫かわいい』」なのだそう。

アグリーベイビーズ
若い世代に人気のアグリーベイビーズ(出所=PR TIMES/エルソニック株式会社)

また、フィンランドのヘルシンキ自然史博物館で展示されている古代魚「サカバンバスピス」の復元模型がSNS上で話題となりました。古生代のオルドビス紀(約4億6000万年前)に生息し、すでに絶滅した魚です。両目が体の正面にあり、口は常に開いていて、何とも言えない表情。それでいて泳ぎが下手だったそうです。物悲しくも健気な見た目が大うけしました。

TikTokなどで人気のキャラクター「らぶいーず」にも「不憫かわいい」が見られます。「さみしがりやでちょっぴりメンヘラな『すもっぴ』と、マイペースでわがままな『ぴょんちー』のらぶらぶな毎日」がアニメーションで描かれています。

一緒に寝ているぴょんちーのおならに苦しむけど、離れられないすもっぴを描いたTikTok動画の再生回数は1200万回超。スマホに夢中なぴょんちーに構ってもらえずいじけるすもっぴのアニメなど、カップルの日常のような場面が少し切なくも愛らしく描かれており、若者はその「不憫かわいい」さまにキュンとしているようです。

「ちょっとかわいそう」に共感するZ世代

「不憫かわいい」は、SNSでバズるだけでなく、人々の「真似をしたい」という欲求も刺激しているようです。

例えば、YouTubeで今年3月に公開された「強風オールバック」という曲があります。クリエイターの「ゆこぴ」氏が制作し、すでに6000万回以上再生されている動画です。ランドセルを背負う女の子が、セットした髪型が強風でダメになりながらも前に進もうとする、ミュージックビデオが話題になりました。