だが、現地の生活上、根本的にカバと距離を置くことは難しい。トレイル講師は、「残念ながらマラウイ共和国などに住む多くの人々は貧しく、自分たちが育てた食べ物や獲った魚に生活を依存しています」と語る。農作物に最適な土壌や漁場が、偶然にもカバの生息地となっていることが多く、人間にとってもカバにとっても不幸な衝突が絶えないのだという。
身体の半分を飲み込まれた2歳児
カバと生活圏が近い人々にとって、カバとの遭遇は命がけだ。幼児が半身を呑み込まれ、かろうじて生還した事例が発生した。米CNNが報じたところによると、東アフリカのウガンダ共和国で昨年12月、2歳の男の子が南西部ケイトゥ湖の自宅近くで遊んでいたところ、カバに身体の半分を呑み込まれた。
近くにいた人物がカバに石を投げて威嚇し、ひるんだ隙に男の子を救出したという。男の子は一時入院したが、その後現地警察は、完治して退院したと発表した。
警察は声明を通じ、「野生動物は非常に危険であると心得ておくべき」であると近隣住民に呼びかけている。「野生動物は、本能的に人間を脅威とみなすことがあります。どのようなふれあいであっても、常軌を逸した行動や攻撃的な行動を引き起こすおそれがあるのです」。
強力なアゴで、ライオンを瀕死の状態に追いやる
追い詰められたカバは、百獣の王・ライオンにさえ牙を剥く。ナショナル・ジオグラフィック誌は、ライオンでも「背後に気をつける必要がある」とし、ライオンを瀕死に追い込んだ事例を取り上げている。
ライオンは油断しているカバの背後から近づいて仕留めようとしたが、すんでのところで気取られたようだ。あっという間に立場は逆転し、ライオンは必死になって逃げようとする。しかし、時すでに遅し。カバはライオンに追いつき、強力なアゴでライオンの頭に噛みついた。カバのアゴは、1平方センチあたり最大70キロの圧力を加えることができる。
ライオンは引き倒されたあと、這々の体で走り去ったが、命はそう長くなかったようだ。内臓が破裂し口から血を流した「瀕死の状態」で発見されたと同誌は報じている。
地元のガイドすら、カバを避けられられない
成人が上半身を呑み込まれた例もある。生還したこの男性は、幸運を噛みしめているようだ。
CNNによると事件は1996年、ジンバブエでのサファリ・ツアー中に発生した。男性ガイドのテンプラー氏は厳しい認定試験に合格し、誇りを持って観光客に野生動物の世界を案内していたという。「のどかなものでした」とCNNに語る。「ある日の勤務中に、本当にひどい経験をするまでは」。