カバは「最も攻撃的な動物のひとつ」
カバは草食動物であり捕食のために人間を襲うことはないが、襲われればひとたまりもない。水面から目と鼻を突き出す様子はユーモラスだが、水中には体重4トン、体長は最大4メートル超にもなる巨体が潜む。1日に80キロの草をぺろりと平らげる。
ナショナル・ジオグラフィック誌のイギリス版は、ライオンさえカバに攻撃を受ける場合があると指摘する。「カバはあらゆることを思うがままにする」ため、「地球上で最も攻撃的な動物のひとつ」だという。ワニやライオンなどの肉食動物でさえ、避ける方が賢明なほどだという。
同誌が紹介する動画では、ケニアのマサイ・マラ自然保護区で観察された一幕を知ることができる。4頭の雌ライオンが寄ってたかってカバの尻に噛みつき、爪を立て、必死で仕留めようとする。だが、襲われている側のカバは平然と小走りを続けており、ライオンたちに勝機は見えない。動画は途中で終わっているが、このあとカバは見事に逃げおおせたとナショナル・ジオグラフィックは報じている。
同誌によるとアフリカでは毎年、マラリアを除くどの疫病よりも多くの人間を殺しているという。また、粉砕力は強力で、カヌー本体に噛みつけば真っ二つにへし折ることができるほどだ。
年間3000人が犠牲になっている
アフリカの野生動物を解説するウェブサイト「サファリズ・アフリカーナ」は、カバが年間で約3000人の人間を殺していると解説。アフリカにはほかにも危険な動物が多いことから見落とされがちだが、「実のところカバは、アフリカの大型動物のなかで最大の人殺しである」と指摘する。
年間200人が犠牲になっているとみられるライオンや、300人を殺しているワニ、そして500人を死に追いやっているゾウなどを超えて、カバの被害が深刻だという。
カバはなぜ人を襲うのか
草食動物であるカバが人間を襲うのはなぜだろうか? リーズ大学の博士課程学生であるハンナ・レイシー氏は、ワシントン・ポスト紙に対し、カバの雄は「水中では極めて縄張り意識が強い」と説明している。「(縄張りに入り込んだ)ボートがカバを刺激し、脅威と受け止められることで攻撃を誘発していると考えられます」。
カバは陸上でも活動するが、水深の深い水域は彼らにとって、肉食動物の少ない安全地帯だ。本来安心できるはずの水中のテリトリーにボートが侵入することで、攻撃的な捕食者が近づいてきたと誤解することがあるようだ。
ワシントン・ポスト紙は、カバの住処をボートで通過せざるを得ない場合、あらかじめ大きな音を立てて人間の存在をカバに知らせるよう勧めている。パドルで水面を叩くなどが有効だという。