入院や施設入居の際、保証人がいない問題に直面

親の遺産900万円を含む資産1400万円があり、パートの仕事を手に入れて、この先もしばらくは働けそうな吉田さんだが、現在の心配ごとは、天涯孤独だと感じていること。2歳下に弟はいるが、もう20年くらい会っておらず、正確な住所もわからない。弟にはひとり息子がいるものの、離婚して、元妻が引き取ったとのこと。

吉田さんは甥が幼かった時に2~3回会ったきりで、社会人になっている甥とは、会っても顔がわからないだろうという。弟とも縁が切れているような状況では、自分が大病を患ったとしても、自分の面倒を見てくれる人がいない。そのことを、今の吉田さんはとても不安に感じている。

実際に吉田さんは、2年前、体調を崩して入院したことがある。その際、入院の保証人を求められたが、「誰もいない」というと、入院する際に少しもめたそうだ。ソーシャルワーカーの人があいだに入り、入院に関する手続きを手伝ってくれて、事なきを得たのだという。

その時は3日間ほどの入院ですみ、退院の手続きも自分でおこなえたそうだが、「もし今後、救急車で運ばれたり、長期間の入院が必要になったりしたら、身元保証人のいない自分は、入院することもままならないのではないか」という恐怖に襲われたのだという。

屋外に座り、星を見ている女性のシルエット
写真=iStock.com/m-gucci
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入院や施設入居の際に身元保証人を担ってくれる会社

おひとりさまの入院や施設入居の際に、身元保証人の代わりを務めてくれる身元保証会社や団体がある。

「身元保証会社と契約を結んでおけば、入院する際も病院に駆けつけて、必要な手続きをしてくれたり、病状の説明を一緒に聞いてくれたりしますよ」と吉田さんに伝えると、「ぜひ、話を聞いてみたい」とのこと。

そこで今回は、数ある身元保証会社の中から、筆者が5社ほど選び、吉田さんに直接話を聞きに行ってもらった。そのうちの3社は吉田さんに同行して、筆者自身も身元保証会社からの説明を受けた。

身元保証会社が提供するサービスには、スタンダードな基準がないので、各社が提供する身元保証などの生前契約は、少しずつカバー範囲が異なっている。吉田さんは入院する場合の身元保証人になってくれるだけではなく、病状説明などを一緒に聞いてくれたり、通院に付き添ってくれたり、治療についての意向を事前に登録できる身元保証会社を選択した。

また、亡くなった後に必要となる手続きに対応してもらうために、葬式のプランを選択し、死後事務についても委任することにした。吉田さんが身元保証と死後事務の契約にかかった費用は、合計で200万円ほど。身元保証会社に費用を支払ったことで貯蓄が減ってしまったが、パートを70歳くらいまでは続けて、減ってしまった分の貯蓄をリカバリーしようと、吉田さんは考えているそうだ。

実際に身元保証会社と契約した吉田さんは、こう話した。

「畠中さんに名前を挙げていただいた5社を実際に回ってみて、各社が提供しているサービスには少しずつ違いがあることがわかりましたし、自分が求めているサービスは何かを整理することができました。200万円という費用は、自分にとって安くない負担ですが、いざというときには病院に駆けつけてくれる人がいる安心感を得られました。今までは天涯孤独ということで、入院やら施設入居にただただ怯えていましたが、自分にできる努力をしたことで、いざというときの不安がかなり軽減しました」