「ヒガシの覚悟」でいけると思ったのか

「『あのヒガシが引退してまで社長に就任して責任を取ります。主要な大物タレントたちで話し合って合意も取り付けました。さあこれがジャニーズ再生です』って。世間からすればヒガシが引退しようが大物タレントが合意しようがそんなの知らんよ、けど内部の本人たちにとってはそれすら重大事件。それで世の中にも通せる、いけると思ったんだな。これは他業界からの反発必至」

「せめて自分も被害者でありその組織文化の中で育ってきてしまったと認めた立場の人が内側から再生するという図式であったならね。いま事務所に残っている人たちは被害者だと言えないまま活動を続けて、事務所の利益を上げるわけだから」

「代表取締役がジュリー氏のまま、株も手放さないまま、タレントたちの活動の受益者でありながら、“かろうじて声を上げることのできた”被害者を個別に救済するという歪み……。事件が大々的にセンセーショナルだったからみんなでメンタルに打撃を受けましたってだけで、事務所内の構造は大きくは変わらなかったってことだよ」

「世界(視野)が狭すぎる。国内だけじゃなくて世界にもニュース配信されて、国連人権理事会まで乗り出した件なのに。これが一種、ジャニーさんの洗脳の成果でもあるんだね、きっと」

東山氏の弁の中には、一部のファンからの「ジャニーズの名前は残してほしい」との希望や、自分たちがこれまで培ってきたエネルギーやプライドの表現が、ジャニーズという言葉を社名に残すこと、つまり性加害者の名を社会に残すことの根拠だとあり、疑問の声が噴出した。

また、ジュリー氏があくまでも叔父の性加害を知らなかった、母親でもあるメリー喜多川氏ともそのような話を腹を割ってできるような関係性ではなく、同族経営企業に属しながらも異様と呼べるほど疎遠で緊張感のある関係にあったとの弁は、一般の感覚から大きく離れたものだとの印象も残した。

再発防止特別チームの報告書の中身

2023年8月29日、ジャニーズ事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」が発表した調査結果および会見は、それまで国内外で報じられ議論されてきた全ての論点を第三者的客観性から押さえ、十分にわれわれの疑念に答えてくれた、納得感のある素晴らしいものだった。

ジャニー氏による性加害を事実と認め、「20歳頃から80歳代半ばまでの間、性加害を間断なく頻繁かつ常習的に繰り返した」彼の性嗜好異常(パラフィリア)を遠慮容赦なく言明した。

脚注の中では、日本での文献にしてようやく「小児性愛(ペドフィリア)」の言葉を用いてくれた。被害者数を、思春期少年を中心に「少なく見積もっても数百」と推計し、そのような異常行動に至った原因の一つとも考えられる、ジャニー氏の幼少時の被性虐待体験についても触れた。これは、おそらくそうではないかと考えていた人々の疑念に明確に答えるものでもあった。