日本にはない「朝食」需要を掴んだ

モス快進撃の2番目の理由が「日常食としてのモス」の立場確立だ。日本のモスバーガーは、ここ20年間ほど店舗数は微減傾向にある(2000年1543店舗→2023年1292店舗)が、台湾モスバーガーは右肩上がり。2000年は40店舗だったのが、23年には305店舗と7.5倍に増えている。

その要因は、日本にはない「3食モス」を実現する食環境にある。

台湾(をはじめとする東南アジア圏)は、基本的に「朝・昼・晩、すべて外食」である。働く女性も多く、一家の専業主婦が弁当を含め3食自炊する日本のような文化は、かの地にはない。街にはファストフード以外にも、多種多様な飲食店やフードコート、屋台店が充実している。台湾人はそれらをフル活用して、3食を充実させているのだ。

「台湾モスでは、朝食が最初の売り上げピークです。自分の行動を振り返ってみても、朝食のルーティンってだいたい決まってきますよね。家で食べるメニューも、出勤途中で調達するモーニングも、だいたいパターンが決まってくる。ということは、『朝食はモスで食べる』人を増やせれば、日販もかなり変わってくるということです」

玉子サンドやベーコンエッグ、サンドイッチも

その言葉通り、台湾モスでは「朝食メニューが」が充実している。日本では約1292店舗中、朝食特化メニューを提供しているのは500店舗ほどだが、台湾ではほぼすべての店舗で、朝食メニューを展開しているのだ。

西門成都店の外観
西門成都店の外観(写真提供=モスフードサービス)

「台湾では、『朝に玉子を好んで食べる』という食習慣があり、朝食メニューでは玉子を使用した商品が売れ筋です。玉子サンドやベーコンエッグなど。さすがに「アフターオーダー式」では、忙しい朝に対応できないので、サンドイッチなど作り置きも陳列しています。

正直、朝食は単価としては高くはありません。それでも一日を通した売り上げ全体の約3割を朝食が占めているから、バカにできません」

もう一つ、台湾モスが売り上げを伸ばしている要因に、「物販商品の充実&売り上げ」がある。

「クリスマス以外にも、台湾の人々は旧正月や中秋節、端午節や国慶節など、季節の行事を大切にします。しかも、その都度親しい人や親戚にギフトを贈る習慣があるんです。そこを商機と捉える私たちにとっても、知恵の絞りどころです。

端午の節句には、ちまきのような形状のデザートを考えたり、日持ちする商品を1000円程度のプチギフトとして用意したり。さらに台湾モスでは、現地の特産品のeコマースサービスも行っています。産地特産品のマンゴーやライチなどを、モス店舗で予約していただき、私たちがお届けする仕組みです」