「ヘルスメーター」はタニタが作った和製英語
体重計は英語ではバスルーム・スケールまたはバス・スケール、ウェイト・スケールといい、ヘルスメーターは完全な和製英語だった。「健康の度合を測る機械」という意味合いからこう命名したという。抜群のセンスのよさである。その後、本当に体重が健康度を計る指標になったのだから、驚くべき先見の明だった。それからのタニタの歴史は、日本人の体重の歴史である。
ヘルスメーターの売れ行きが大きく伸びるのは、1964年開催の東京オリンピック以降。内風呂が増えて銭湯を使う人が減りはじめたのと、高度経済成長で国民の栄養状態が上向きになるのと並行して健康意識が高まり、人々が太りすぎや痩せすぎに敏感になってきたからだった。
1978年、マイクロコンピュータ搭載型では世界初のデジタル式ヘルスメーターを発売。200グラム単位の表示ができるようになり、計量データの記憶やグラフ表示、視覚障害者向けに音声発生装置の取り付けも可能になった。価格はアナログ式の約4倍と高く、売れ行きは鈍かったが、アナログ式の黒字でデジタル式の赤字を埋めながら開発を進め、デジタル式の世界一になることを会社目標に掲げた。その頃の日本のモノ作りには、余裕と夢と開拓者精神が豊かにあった。
1台50万円近くもした最初の体脂肪計
1990年には肥満問題の解決をめざし、栄養や運動の管理指導と研究を行う「ベストウェイトセンター」を開設。
肥満とはたんに体重が多いことではなく、健康のために気をつけるべきは体のなかの脂肪の量にあると、体脂肪率に着目し、1992年に体脂肪計と体重計を合体させた製品を業務用に発売した。素足で乗ると体に微弱な電流が流れ、抵抗値を計ることで脂肪量を測定し、体重と身長のデータから体脂肪率を算出するというものだ。価格は50万近くもした。
その2年後には、世界初の体脂肪計付き家庭用ヘルスメーターを発売した。価格は4万5000円。業務用の10分の1とはいえ高価だったので、月に数百台しか売れなかったらしい。そこでコストダウンに取り組み、翌1995年に2万円に値下げした普及版が大ヒットし、1997年にヘルスメーターの売り上げで世界一を、1998年には体脂肪計の出荷売上高で世界一を達成した。