20代論の共通項と矛盾

さて、まず20代論について見ていくことにしましょう。今回は、各著作の共通点に注目してみたいと思います。ほぼ同様に論じられている点としては、読書および自分自身の向上にお金を使うこと(自己投資)の重要性、人生の先輩としてのメンターの重要性などがあります。

より詳しく見ていきたい共通点として、今回はあと2点挙げたいと思います。1つめは、そもそも20代とはどのような時期であるのかという点です。基本的には各著作において、20代は無限の可能性がある時期なのだからとにかく何でもやってみよう、挫折や失敗もどんどんしようと語られています(注:以下、引用箇所における数字表記は、引用者によって全て算用数字に変えています)。

「あなたには無限の可能性がある。やりたいことは何でもできる。20代は少々の失敗やミスは、まだ許される年代である」(川北20、1p)
「10代や20代の挫折や失敗はむしろ勲章で、そこから這(は)い上がろうともがくからこそ、潜在能力が引き出され、人としての魅力が醸成(じょうせい)される」(大塚20、108p)

しかしその一方で、この20代こそが人生の分岐点だとも語られています。無限の可能性があるとされる一方で、後の人生を決定づける分岐点でもあるのが20代だとされるのです。

「20代の過ごし方で、その後の30年が決まる」(千田20b、4p)
「20代でやるべきことをやり尽くせば、数年が経って30代になったときに、あなたは周りの人とはまったく輝きの異なる人物になっています」(井上20、156p)
「どんな種をまくかで一生が決まってしまうわけですが、プレッシャーを感じる必要はありません」(大塚20、3p)

無限の可能性を有しながらも、のちの人生の分岐点となる20代。「プレッシャーを感じることはない」とは書かれていても、分岐点だとされることには変わりありません。

ここに「年代本」独特の矛盾が垣間見えます。つまり、実際にどの行動や経験が分岐点となるのか、どの挫折や失敗が後に生きてくるのか、これらは20代の時点では分からないということです。「出し惜しみをした人と全力疾走した人との差が顕在化するのは、30代になってからなのです」(大塚20、77p)とあるように、結局のところ、ある行動や経験の評価は事後的にしか行えないのです。

もちろん、それぞれの著者が、多くのビジネスマンの成功・失敗経験を踏まえたうえで各年代の課題が示されているわけですが、主張の根拠はあくまでも経験的な水準に留まっています。とはいえ、このように曖昧な、非実証的な部分を残すからこそ、まだ見ぬ未来の成功に向けて現時点での行動を促す「年代本」は次々と生まれてくるのかもしれません。