※本稿は、大塚寿『今からでも間に合う! 会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)の一部を再編集したものです。
元判事や元NHKの居酒屋、電通出身者のラーメン店も
意外と言っては失礼かもしれませんけれど、シニア転職で、前職とはまったく違うセカンド・キャリアを選択する人がいます。
もう20年ほど前になりますが、岡本健さんが話題となり、本やテレビ番組でも紹介されました。還暦を期に判事を依願退官し、辻調理師学校に入学。翌年に居酒屋を開店した方です。
私自身、NHK出身者の居酒屋や、電通出身者のラーメン店、リクルートOGの割烹やバーに行ったことがありますし、私の息子はTBSのOBが経営するダーツバーに通っていました。
また、東大出身のリクルート元役員が蕎麦懐石の店を経営していたこともあります。
保育士になったIBMの元部長
セカンド・キャリアで飲食店を開店するケースにはもう驚きませんが、さすがにIBMの元部長が保育士になっていたのには驚きました。
保育士の資格を取り、保育園で週3日勤務しているのです。
「じじせんせーい」と子どもたちが駆け寄ってきてくれることが、今のいちばんの喜びだそうですが、やはり「なぜ、元IBMの人が保育士に?」と思ってしまいます。
達観しているというのか、最初のキャリアで「やり切っている」のか。セカンド・キャリアでは自分がホントに好きなことや、喜びを実感できること、健康維持に役立つこと、生活のリズムをつくりやすいこと、といった目的で仕事を選んでいるのでしょう。
いま「マンション管理人」の仕事に、なかなかのキャリアをお持ちの方々が応募し、倍率も高くなっています。
また、タクシードライバー、警備員、新聞配達、入力作業といった仕事にも、日本のトップレベルの大学を出た人がセカンド・キャリアとして応募し、粛々と従事しています。
「人はそれぞれ。自分が良ければ、それでいい」と考え、世間体など気にせず、自分の好きな仕事をする、ということは、人として成熟していないとなかなかできないものです。
「高学歴でキャリアもあるのに、こんな仕事につくのか」と考えるのではなく、セカンド・キャリアをポジティブに受け止め、好きな仕事をするほうが、豊かな60代を迎えられるでしょう。