交渉でジェンダーが重要な要因になるのを防ぐには、次の方法が役に立つ。

(1)ジェンダー・トリガーを知る

ある程度の不確実性はどんな交渉にもつきものであるため、ジェンダーに関連した固定観念や役割期待を助長するおそれのある状況を認識しておこう。ジェンダー・トリガーの作用を阻止する努力をするか、トリガーをうまく利用しよう。たとえば、不確実性が高く競争的な環境では、男性は、自らの競争衝動を掻き立てることで結果を最大にしようという意欲を高められるかもしれない。それに対し女性は、自分だけでなく自分の同僚、部署、会社、顧客の利益も代弁しているのだという意識を持つことで、意欲を高められるかもしれない。

(2)準備を怠らない

あなたが男性であれ女性であれ、給与交渉や契約交渉を始めるときには、どこまでが可能で、どこが妥当な線かを事前にできるだけ調べておこう。業界の標準や前例を調べ、すでにその会社やその業界で働いている人たちから話を聞こう。最も大切なのは、本当にやる気を持ち続け、優れた仕事をするために自分が必要とするものは、何であれ要求するのをためらわないことだ。

(3)報酬や恩典について透明性を高める

報酬やキャリア開発についての男女平等を促進するために、会社は、社員にオファーする可能性がある機会や恩典を文書で公表する必要がある。これはすべての社員に標準化された恩典を与えるということではなく、交渉ではどのような問題を持ち出すことができ、決定はどのような基準によってなされるかを明確に示すということだ。

報酬は会社と社員が合意しているパフォーマンス指標にもとづいて決定され、給与やボーナスや昇進は毎年交渉できるということを会社が明確に伝えていれば、報酬の差はジェンダーよりも実際のパフォーマンスの差を強く反映するものになるだろう。

(4)期待値を当事者に知らせる

社員を競争的な交渉環境に送り込むときは、どの程度のパフォーマンスを目指すべきかを明確に伝えよう。透明性の高い比較情報とここまでやれば合格、という感覚を与えられていれば、男性も女性もよりよい結果を達成するだろう。

高い目標、しかも妥当な目標を設定することは、すべてのネゴシエーターにとって有効なことだが、不確実性が高く、競争的な交渉環境にいる女性にとって、期待値を伝えることは、とくに大きな助けになるだろう。

(文=ディナ・W・プラデル、ハナー・ライリー・ボウルズ、キャスリーン・L・マクギン 翻訳=ディプロマット)