「10代の教祖」になるとは想像していなかった
そして、終演後は、割れんばかりの拍手。観客全員が心を一つに重ね合い、期待と感動に身を委ねていました。「これはたいへんな可能性を持った新人を発掘したものだ」、「自分は何てラッキーな男なんだろう」。尾崎は、自分を限りなく高みに連れて行ってくれるアーティストに違いないと確信したデビューライブでした。
しかし、この日訪れた600名に近い観客の誰もが、わずか1年ほどで、目の前にいる若者が「10代の教祖」と呼ばれるようになり、「若者の代弁者」、「反逆のカリスマ」などと形容されるロックシンガーになるとは、想像もしていなかったに違いありません。私を含めたCBS・ソニーの関係者もそうです。おそらく尾崎自身も、想像していなかったことでしょう。
「伝説の場所・ルイード」は2020年に閉店
なお、ルイードは、天井が低く、ステージは床から30~40センチほどで、客席との一体感、熱気は半端じゃなかった。アーティストやプロダクションにとっては、箱の大きさではなく、「ここに立つ」ということが大事なことでした。レコード会社にとっても、売れるかわからない新人を試す場所として申し分ない箱でした。
逆に言えば、そんな間口の広さが、数々の未来のスターを生んできたのです。もちろん、安全は大事ですが、消防法の改定や、先のコロナ禍もあって、この時代のような盛り上がりは、もはや望めないのだと思うと、残念でなりません。
ちなみに、ルイードは振動・騒音問題で87年1月に閉店し、別の場所で新宿ルイードK4として復活したものの、2020年9月、新型コロナウイルスの蔓延の影響から惜しまれつつ、閉店しました。
2016年2月には、尾崎の息子・裕哉が、初のワンマンライブを行っています。