18歳、ロビーにまで人があふれたデビューライブ

そして、デビューから2カ月が経った84年2月、青山学院高等部を自主退学した尾崎は、3月15日、高等部の卒業式の当日、新宿ルイードにてデビュー後、初ライブを行いました。

会場となった、今はなき新宿ルイードは、キャパシティーこそ300名と小規模ではあったものの、まさにライブハウスのレジェンドと言ってふさわしい、フォーク、ニューミュージック、ロックのアーティストたちの登竜門の役割を果たしていた伝説の場所でした。

井上陽水、荒井由実、イルカ、シャネルズ、佐野元春らも、ここから世に出ていきました。

新宿駅東口から5分ほど歩いたところにある、紀伊国屋書店本店近くの雑居ビルの4階に、ルイードはありました。当日は、キャパに対して、倍近い観客が訪れ、入りきれなかった人たちは、狭いロビーのモニター付近に陣取っていました。

寂しげな印象を与える横顔の輪郭も“スター”だった

先にも述べたように、多くの成功したシンガーは地方の出身で、良くも悪くもローカルカラーをしょっているのが、魅力の一つとなっていました。ロックバンドで言えば、2023年に惜しくも急逝した鮎川誠が率いる福岡県出身のロックバンド、シーナ&ザ・ロケッツなどが、その例です。尾崎とほぼ同時期、ルイードには、同じく福岡から上京したザ・ルースターズや、チェッカーズも出演していました。

ライブ当日の尾崎は、まさに都会の垢抜けした若者の持つ世界観を、ルックス、立ち姿、詞の世界、メロディー、サウンドに、粗削りながらも、みずみずしくぶつけていました。

ロックシンガーの尾崎豊
写真=時事通信フォト
ロックシンガーの尾崎豊

長身で痩身、長い脚、面長の顔にかかる、さりげない長髪。時にはぐっと見開かれ、またある時には、澄んだ瞳が静かに閉じられる。やや青白い頬の線、少し流線形の寂しげな印象を人に与える横顔の輪郭に、たまらないセックスアピールを感じたものです。この横顔の輪郭も、私がスターを作るにあたり重要視する、ファクターの一つでした。