「腹の虫が治まらない」は的確な表現

腸と脳は高速道路のような迷走神経でつながっていて、腸内環境の変化はダイレクトに私たちの脳、ひいてはメンタルに影響していたのです。

これを「脳腸連関」といいますが、ストレスや悪玉菌によって腸内に炎症が起きると、脳は不安定になります。また、下痢や便秘の症状に悩まされていると、無意識下の不快感が続き、メンタルの状態も悪化します。

疲労感が強い、やる気が出ない、ダルいといった症状を感じているとき、その原因は腸内環境にある場合が少なくありません。

そう考えると、「腹の虫が治まらない」といった昔ながらの言い回しは、じつに言い得て妙ですね。腹の虫を安定させると、疲労感も、やる気のなさも、ダルさも解消される可能性が高いといえるのです。

ちなみに、前述した迷走神経は自律神経に分類されますが、もともと迷走神経は脳から臓器へ情報を送るといわれていたのが、自律神経の研究者であるステフォン・ポージェス博士によって、自律神経の8割は身体情報を脳に送る神経であることが判明しました。脳腸連関が成立することがわかったというわけです。

腸内に善玉菌を増やすとやる気が高まる

腸内環境を改善するとされる1000億個もの乳酸菌シロタ株が、生きたまま腸に届くという「ヤクルト1000」が大ヒットしていますが、脳腸連関の関係性からいうと、腸内に善玉菌を増やす試みは、やる気を高めてくれるはずです。

配達用の「ヤクルト1000」および店頭販売用の「ヤクルトY1000」
配達用の「ヤクルト1000」および店頭販売用の「ヤクルトY1000」(写真=Hanabishi/CC-Zero/Wikimedia Commons

実際、オーストラリアでは2023年から腸内細菌を悪玉菌から善玉菌に置き換えていく「腸内細菌移植」の治療法が保険適用となりました。

これまでやる気のある・なしの議論は、体の“外側の要因”で語られることがほとんどでした。人間関係、仕事の状況、報酬のあるなしなどです。

最新の医学によって、じつは体の内側である腸内環境が安定して、初めてやる気が出る土台が整うことがわかってきたのです。

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌をとることができるヨーグルトや、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維を多く含んだ海藻類、乳酸菌が豊富で食物繊維も多い漬物やキムチなどの発酵食品、オリゴ糖を豊富に含む豆腐、豆乳、きなこといった大豆製品などを積極的に摂るようにしましょう。

やる気は腸から整える! ぜひ実践してみてください。