※本稿は、田中伸明『自分のやる気が上がるのは、どっち?』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
無意識の行動を起こさせる脳の仕組み
「やる気」と「腸内環境」は“超”関係しています。深く密接につながっています。
どのようにつながっているのかを説明するため、私たちの脳が無意識のうちに体の情報をモニタリングしている仕組みを解説します。
例えば、小さな会議室に何人も集まって話をしているとき、目の前に窓があると換気のために少し開けたくなります。
そこで、隣にいる人から「どうして窓を開けるの?」と聞かれたら、あなたは「息苦しいから」と答えるはずです。
ただこの息苦しさは、口に出して初めて強く意識したもので、むしろあなたは無意識のうちになんとなく居心地の悪さを感じ、窓を開けたいと思ったのではないでしょうか。
この無意識の行動を起こさせているのが、脳のモニタリングシステムです。
脳のモニタリングシステムは、自律神経を通して脳の「島」と呼ばれる部位に体の情報を集めます。先ほどの例で言えば、酸素量が足りないという情報が島に集まり、不快感を覚え、無意識のうちに状況を改善する行動を起こさせるのです。
腸内環境の変化はメンタルに影響する
このモニタリングシステムが処理しているのは、酸素量だけではありません。
肌から感じる室温や湿度、靴の中に紛れ込んでいる小石の不快感、体を包み込むソファの快適な座り心地、遠くから香ってくる花の匂い、隣の人が立てる小さな物音など、あなたの五感が察知するありとあらゆる情報が島に集まります。
そのなかでも重要なのが、腸内環境の情報です。
じつは脳内にこうした仕組みがあるとがわかってきたのは最近のことです。
以前から臨床現場にいる医師たちは、うつ病の患者さんが下痢や便秘にも悩んでいることを経験的に知っていました。しかし、腸内環境の悪化が脳に強く影響しているとまでは考えていなかったのです。
ところが、腸内環境を改善する善玉菌のオリゴ糖などを摂ると、うつ病の症状が改善されていくことがデータとしてわかってきました。
私も当初は「なぜ?」と疑問を感じていましたが、腸内環境をモニタリングする迷走神経が脳とつながっていて、眼窩前頭前野という消化器の中枢が感情の動きを大きく左右していることがわかってきたことで、「なるほど」と腑に落ちました。