歯科矯正の3つの課題を解決するサービスを作った

Oh my teethのマウスピース矯正は、従来の歯科矯正が抱える3つの課題を解決するサービスとなっている。1つめの課題は、高額な価格だ。従来のワイヤー治療が約100万円という高額なのに対し、同社のサービスは、上下前歯の部分矯正の「Basicプラン」が一律33万円と、3分の1に抑えられている。

2つめの課題は、不便で高頻度の通院だ。従来は、矯正完了まで約20回の定期的な通院が求められるが、同社では、通院は最初の1回だけで、その後はオンラインで矯正をサポートする仕組みを作ることで、高い利便性を実現している。

3つめの課題は、矯正を途中で挫折してしまう離脱率の高さだ。同社によれば、「歯科矯正経験者の約3割」が途中でやめているのに対して、同社の離脱率はわずか3%で、97%のユーザーが矯正を完了できているという。その秘訣ひけつは、専属の医療チームによる「ユーザーを1人にしない」オンライン相談サービスにある。ユーザーは24時間いつでもLINEで質問や相談ができる。また、週に1度、自分の口内を撮影して送ると、ドクターがチェックしてコメントを返すなど、オンラインの二人三脚で矯正完了までたどり着ける仕組みが整えられている。

歯の模型を用い、説明している歯科医
写真=iStock.com/ronstik
※写真はイメージです

医療サービス従事者としての責任も求められる

Oh my teethの歯科矯正は、「高額で、不便で、1人でつらい」という従来の矯正を、「低額で、便利で、オンラインで伴走する」に変えたサービスといえる。創業当初は、「こういうものだから」「素人が入ってくるな」など、幾度も業界の慣習の壁が立ちふさがったという。その壁を乗りこえ、「日本の歯科体験を変えたい」という創業者・西野誠氏の問題意識と解決提案に共感するドクターを増やしていき、専門クリニックの開設、40以上の歯科クリニックとの提携を実現するなど、業界構造の変革を進めている。また、歯科矯正を、美容やトレーニングと同様のボディメイキングの1つとして位置付け、「ちょっと歯をきれいにしよう」と気軽に利用できるサービスに変えて、歯科矯正の対象者を大きく広げていっている。

同社は、歯科矯正に加えて、ホワイトニングのサービスも展開を始めており、「歯」の当たり前の更新をさらに広げていこうと挑戦している。ユーザーにとって「手の届く憧れ」「賢い選択肢」となれれば、認知度と普及をさらに進めて飛躍していくことができるだろう。

1つ留意すべき点は、同社はドクターとの提携、治療の方針やデータの開示など、安全性の担保に努めているが、新しい医療サービスとして、長期的な視点でのトラブルやリスクが一切無いとは言い切れない。そのため、同社には、ビジネスの発展と併せて、医療サービス従事者としての社会的責任を果たすために、サービスの点検や検証に継続的に努めることが求められる。

※1 経済界ウェブ「人と商品に投資しアイウエアで豊かな未来を実現―田中 仁(JINS社長)
※2 アキナイLABO「上場廃止寸前の大ピンチ!ユニクロ柳井さんの言葉で奇跡の復活劇

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