ランニングで前頭葉が活性化する

ここで一つ、運動によって前頭葉を鍛えることができるというエビデンスを紹介しましょう。

筑波大学のヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センターの征矢英昭教授らの研究で、ランニングによって前頭葉の前頭前野が広範囲に活性化することが明らかになり、学術誌にオンライン発表されました。

発表された研究によると、中強度(ややきつめ)のランニングをおこなうことで、脳の前頭葉の前頭前野が広い範囲で活性化することが確認されたのです。

この研究には大学生・大学院生26名が参加して、10分間のランニングをしたのち、15分間の安静を取ったあと、脳の局所的な血流の変化を捉える「機能的近赤外分光分析法(FNIRS)」を用いていて検証したところ、左右両側の前頭前野が広範囲にわたって活性化したのです。

【図表1】ランニングによる脳の活性部位

それが図表1で、ランニング後の課題回答時に有意な活動が見られた脳の部位が0%~15%の濃度で表現されています。

成功を収めるために最も重要なこと

私たちが成功を収めるために何が必要なのか。努力? それとも才能?

これは、ビジネスやスポーツの世界で長年にわたり議論されているテーマです。この議論に、一つの風穴をあけた人物がいます。アメリカの心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース氏が、世界中の叡智が集結するカンファレンス「TED」で新たな研究成果を発表(2013年)したことは記憶に新しいのではないでしょうか。

それは、「グリット」という考え方です。グリットとは、何かの目的を達成するために継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり抜く力のこと。

冒頭の問いに対して、ダックワース氏は自身の研究結果をもとに、誰もが生まれながらの素晴らしい才能を持っているわけではないし、豊かな才能や知能を持ったすべての人が成功を収めているわけでもないと考えました。

成功を収めるために最も重要なのは、目標の実現に向けた継続的な努力、つまりやり抜く力だと提唱したのです。これを裏付けるため、一見すれば才能の持ち主のように見えて、実はこのやり抜く力で成功を収めた2人のアスリートの事例を紹介したいと思います。