頭の中に、多数の事例や事象を累積して溜め込んで「知の資産」を作り、長期の時間軸を意識して思考すれば、仮説は一瞬ではじき出せる。
ChatGPT をはじめとした、革新的な生成AIが登場しつつある。
AIをうまく使いこなすには、「何をやるか」という目的の設定が重要となる。
目的の設定のためには、「何が課題か?」を把握する仮説スキルが求められる。目的と課題を明確にしたうえで、それをAIに指示すれば、あとはAIが瞬時に「答え」を出す。
AI時代は、仮説時代、になるはずだ。
経営も経済もわからないまま外資コンサルに入社
理系の大学院を卒業し、横河ヒューレット・パッカード(現在の日本ヒューレット・パッカード)というメーカーで数年間、システムエンジニアを経験した後、うっかり戦略コンサルティング会社のボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)に転じてしまったのは、30歳の誕生日だった。
同期は、銀行や商社など一流企業出身者ばかり。しかも、ほぼ全員が海外の名門MBAホルダー。留学もせず、経営や経済に関して無知のまま丸腰で入社したのは、私だけだった。
かなりまずいところに入社したと後悔したが、時すでに遅し。2カ月間、ろくにプロジェクトにもアサインされなかった。
「会社側もきっと何かの間違いで採用してしまったのに違いない」「このまま戦わずしてクビになるのではないか」と思っていたときに、アサインされたのは機械メーカーの新機種開発プロジェクトだった。
開始早々、プロジェクトマネージャーがメンバーに聞いた。
「まだ始まったばかりだけど、どんな新機種を開発するべきか、何か大胆な仮説はある?」
大胆な仮説……普通の仮説もあまり湧かないのに、大胆な仮説は湧いてこない。
「まぁ今の時点の仮説なんて、色々と調べるうちに変わるから。頑張りましょう」とマネージャーはあっさり言っていたが、私は途方に暮れていた。
前職のメーカーでは、言われたことを粛々とやることしか経験していなかったので、仮説なんぞ意識して考えたこともなかった。
この会社では仮説とやらを考えなきゃいけないのか……。
これが、仕事で最初に仮説を求められた記念すべき日である。