あえてプレミア化しないワケ
ただしそれはこの世界では異例の硬派戦略とも言えます。そもそも1940年代の軍用ジープから始まったクロスカントリー4WDの世界は、今ではステランティスグループ傘下の北米ジープのラングラーを除き、ほぼプレミアム化。40年代に生まれた英国ランドローバーは、正統派のディフェンダーはもちろん、高級版レンジローバーまでアルミモノコック化し、後者は1000万円以上出さないと買えません。
元はNATO軍の軍用車だったメルセデス・ベンツGクラスも硬派さを残しつつプレミアム化し、プライスアップ。ぶっちゃけその方向でないと少量生産の4WDは生き残れません。
しかしランドクルーザーはアニキ分の300こそ徐々にラグジュアリー化しましたが(価格は510万円~760万円)、ここに来て250で原点回帰(価格未定)。この競合とは真逆の方向性こそが新型ランドクルーザーのすごさであり、ビジョンの違いでもあるのです。
さらに言ってしまうと、元々ランドクルーザーそのものがトヨタの中で別格であり、別ビジネスとも言える存在です。
まずその歴史がべらぼうに長い。トヨタの世界的ビッグネームであり、世界的ロングセラーと言えば1966年生まれのカローラ、1955年生まれのクラウンが有名ですが、ランドクルーザーの前身たるジープBJ型は1951年にデビュー。ランドクルーザーと改名したのは1954年の事で現存するトヨタ車では最古&最長の歴史を誇ります。
地球上で最後まで残るクルマ
さらに今では170の国と地域で使われるランドクルーザーシリーズですが、頂点たる300は全体の9割以上を海外で販売。約5割を中東、残り4割をオーストラリアとかつてはロシアでさばき、日本で売られるのはたった1割弱。
従来あったプラドは比較的国内シェアが多く日本で3割、欧州で3割、残りを世界で消費していましたが、とにかく日本以上に世界で有名なトヨタ車、それがランクルなのです。
しかもそのヘビーデューティさであり、恐ろしいレベルの耐久性はぶっちゃけ極度に現代化された日本ではわかり得ません。過酷な厳しい道がないからです。
今回の250でもキャッチフレーズで使われた「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」は文字通りのランドクルーザーの代名詞。別名「地球上で最後に残るクルマ」とも言われています。
例えば今回新型250と同時に再発売が発表された1980年代から作られている70系は、本格ヘビーデューティ系と言えるジャンルで一時世界シェア9割以上。ランドローバーなど人気車が居並ぶ中、実は圧勝です。