誰がランクルを買っているのか

具体的には例えば中近東。もちろん世界に冠たるオイルマネーの国で、舗装された道は素晴らしく、最高時速200kmで走れる場所もあるのですが、少しでも外れたら砂漠。

そこではランドクルーザーでないと入ってから戻ってくることができません。文字通り「生きて帰ってこられない」と言います。

そのほかオーストラリアですが、湾岸部にはちゃんと都市や道路がありますが、ちょっとでも内陸側に入るとアウトバックと呼ばれる未舗装路が出てきます。民宿を経営し、片道800kmのアウトバックを毎日買い物で往復される人もいて、そこに大雨が降るとたちまち川ができます。そのような悪路は、乗用車ベースのクロスカントリーSUVでは渡りきることができない。クルマ選びは死活問題なのです。

またシベリアは真冬にはマイナス40度にもなる極寒地で、万が一でもそこでエンジンが止まったら人は死んでしまう。そういう場所で何十年も信頼を得て、売られ続けてきたクルマ、それこそがランドクルーザーシリーズなのです。

運転席に座った時に「自然に手が届く位置」に各アイテムを配置したという
筆者撮影
運転席に座った時に「自然に手が届く位置」に各アイテムを配置したという

オイル交換なしで100万キロ走る

事実小沢は2015年に、今回の250にも搭載予定の2.8LディーゼルターボのGD型エンジンの発表会に行きましたが、驚いたことがありました。

たとえオイル交換をせずに使ったとしてターボタービンは何万キロ持ちますか? と聞いたところ「確実に50万キロ以上」「ヘタすると100万キロ」と返ってきたのです。もちろんオフィシャルに保証する数値ではなく、目安なのだと思いますがそれくらい空恐ろしい耐久基準で作られていることに驚きました。

また、エンジニア曰く「ランクルは壊れ方の研究までしていて、止まったら本当にそれでおしまいなのか、それとも多少の修理で最低限動かせるのかといった面まで配慮している」そうです。クルマと言うより、サバイバルナイフのような世界なのです。

さらにおととし300のデビュー時に聞いて驚いたのですが、ランドクルーザーは300と当時のプラド、一部海外で売られ続けた70の3つのラインナップで、年間グローバルで30万台以上も売っているそうです。しかも現在累計1130万台なのでざっくり毎年30万台売ったとしても37年間売り続けていることになります。

もちろん当初は年間10万台程度でしょうし、いかに長くコンスタントに、それも他にない「ランクル」というクルマを売り続け、信頼性というブランドを作ってきたかわかります。