決断して行動してもらって初めて価値が生まれる

顧客は独断で決断できない

本記事の最後に、営業に活かす仮説には「根拠」とそれを説明できる「ロジック」が必要であることを付け加えておきます。

前回の記事で書いたことを整理しますと、

・営業パーソンは自社の売上を最優先の目的とすべきではなく、「顧客の市場競争力を上げることに貢献すること」を目的にすべきである。
・「取り組むべき課題がわかりにくくなっている」環境では、顧客の市場競争力を上げるために必要なのは製品説明ではなく、取り組むべき課題を明確にすることである。
・市場競争力を生むには「変化対応スピードが必要」であり、そのために最も効果を発揮するのが仮説である。

ということになりますが、どんなに素晴らしい仮説ができたとしても、顧客が決断し行動してくれなければ価値は提供できません。決断して行動してもらって初めて価値が生まれます。

このとき、決断して行動してもらうために必要なのが、仮説に対する根拠とそのロジックです。

仮説に対する根拠とそのロジックは、車の両輪

営業が相手の心を動かすためには「熱意とロジック」の2つの要素が必要ですが、なかでもロジックのほうの重要性が近年上がってきていると私は思っています。私が営業を始めた頃と比較すると、顧客が購買する際の複雑性が上がっていると感じられるからです。

以前は、社内(顧客企業側)で力を持っている人がやりたいと思えば実行できることが多く、その人の心を動かすことが重要でしたが、近年はオリンパス、東芝、神戸製鋼、日産など上場企業による大きな不正が発覚したことで、内部統制に対する監査が厳しくなりました。執行プロセスによる職務分掌が求められ、多くの企業では社長であっても独断で何かを決めることはできません。

この傾向は今後も強まっていくと思います。

そうなると、目の前で商談をしている顧客個人だけではなく、顧客社内の幅広いステークホルダー(利害関係者)の理解が必要になるのです。

鈴木眞理『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)
鈴木眞理『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)

根拠が薄い仮説でも、熱意さえあれば目の前の人の心を動かすことはできるかもしれません。

しかし、その目の前の人が社内の別の人を説得しようとする際には、同量の熱意を持つことは難しいため、ロジックが必要になります。また、もしその投資が妥当だったのか監査で論点になるようなことがあれば、合理的だと説明できるロジックは必須になります。

仮説に対する根拠とそのロジックは、車の両輪のようなもので、片方だけでは前に進みません。仮説を作った後には必ずその根拠を明確にして、説明できるロジックがあって初めて仮説が価値を発揮できるのです。

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