未来のビジネスの種はどこにあるのか。ドリームインキュベータの三宅孝之社長は「日本企業の新規事業への挑戦は、なかなかうまくいっていない。これはかつて有効だった『答えはお客様の中にある』が通用しなくなっているからだ。これからの新規事業はビジネスエコサイクルを構築する必要がある」という――。

※本稿は、三宅孝之『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

成長の概念
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日本の企業はすでに耐用年数を超えている

今、そして、これから、日本で活躍するビジネスパーソンとは、どんな人か。

私は、それはビジネスプロデューサーであると考えています。

ビジネスプロデューサーとは、大企業の次の柱となり得るような数百億、数千億円規模の新規事業を創造する人です。

では、なぜ今、大規模な新規事業を創造する人が求められているのでしょうか?

「失われた10年」と言われてから、すでに20年が経ちました。しかし、いまだに日本経済が大きく成長する兆しは見えてきていません。

それは、日本企業が本業として現在行なっているビジネスの多くが、すでに耐用年数を超えてしまっているからです。経営の柱であった本業が市場の成熟期を迎え、将来的に成長する見込みがありません。

にもかかわらず、「まだ大丈夫だろう」「もう少しぐらいはもつだろう」という希望的観測から、やや無理矢理に延長戦を戦っている企業もあります。しかし、耐用年数を超えた橋は、いつか必ず落ちます。

それがわかっている危機感の強い企業ほど、新しい事業を立ち上げるべく挑戦を繰り返しています。

新規事業が求められている

経営者の関心事項の中で「新規事業の具体化」は、この10年で110%も増えています。

また、日本における売上上位100社のうち約8割がこの10年間に新規事業部門を新たに設立しており、その設立ペースは年々加速しています。

つまり、日本の大企業にとって、「新しい事業の創造」は、トップアジェンダの中でも、とりわけ喫緊の課題となっているのです。

かつて世界第2位を誇った日本の国民一人当たりGDPは、2021年、27位にまで下がりました。時価総額世界トップ10に7社も入っていた日本企業は、今ではゼロ。トップ50に入っていた唯一の日本企業、トヨタ自動車も、2023年2月、ついに圏外となってしまいました。

この間、アメリカでは、アップルやグーグルといった企業により、新たなビジネスがどんどんプロデュースされ、今ではそれらの企業で世界時価総額合計の大半を占めるほどになっています。

日本がビジネス面でも世界に誇れる国であり続けるためにも、「失われた30年」を「失われた40年」にしないためにも、新規事業、それも数千億円以上の大規模な新規事業を創造することが、日本経済、日本企業に求められているのです。

そして、それを実現するのが、ビジネスプロデューサーです。