老若男女問わず誰でもできる安全面を確保した体操だが
トップアスリートを指導するアスレチックトレーナーに聞くと、意外な答えが返ってきた。
「国民にこれだけ浸透している運動はないですし、安全面も確保できている。自重を使った少しダイナミックな動きもあり、普段スポーツをしない人でもできる。中途半端な知識を持つ先生が運動前にストレッチをやらせるくらいならラジオ体操の方が良いと思いますよ」
ラジオ体操第1は、「老若男女を問わず誰でもできることにポイントを置いた体操」で、小学校から工場などの職場まで広く使わること想定して考えられたものだ。ラジオ体操第2は「職場向け」として制定。筋力強化にポイントを置いており、テンポがやや速く、運動量も多い。
いずれにしてもカラダ全体を動かすように構成されており、日常生活で使わない筋肉や関節を動かせるのが大きなメリットだ。さまざまな動きが入るので、筆者は上半身(特に肩まわり)がほぐれたように感じた。ラジオ体操は70年以上前に考案されたものとはいえ、現在でも通用するレベルにあるようだ。一方で好ましくない面や物足りない部分もある。
第1と第2の間の首の運動は要注意
ラジオ体操は第1と第2の間に「首の運動」が入っている。首を上下へ倒す、左右に倒す、左右を向く、に続いて「ぐるっと回す」というパートがある。前出のアスレチックトレーナーはこの首回しはやらない方が良いという。
「ジョイント・バイ・ジョイントという考え方があって、『可動性が重要視される関節』(動くべき関節)と『安定性が重要視される関節』(大きく動かさない方が良い関節)がある。頚椎(首)は後者になるんです。回すことを得意としている構造ではないので、首をグルグルと回すのはお勧めできません」
ジョイント・バイ・ジョイントは、関節がそれぞれの役割で個別に働きながら、複数の関節を協同して働かせることが機能的な動きにつながるというセオリーだ。70年前にはなかった“新常識”だけに、ラジオ体操も10年に一度くらいは見直す必要があるのではないだろうか。中には、首を回したことでグギっとなり、かえって痛めてしまうという人もいる。