日本の地方に埋もれていた宝の山が活かされている

また、アフリカでは、気候条件やICTを活用したハイテク農林業も盛んに行われています。たとえば、鮮やかなロイヤル・ブルーの花が咲くことで人気のリンドウは、日本の気候では年に一回しか収穫できません。しかしケニアやルワンダは赤道直下で日照時間が長いため、年に三回も収穫でき、おまけに標高が高いため、病害虫も少ないというメリットがあります。

2015年からは岩手県八幡平市のリンドウ生産者などが「ブルーム・ヒルズ・ルワンダ」という現地法人を立ち上げ、日本のハイテク技術を活かしながら、アフリカで栽培されたリンドウをヨーロッパに輸出しています。

八幡平市のリンドウ組合には、ブルーム・ヒルズ・ルワンダ社から特許使用料や輸出収益が毎年数千万円ほど還元されています。日本の地方に埋もれていた宝の山(リンドウ栽培の特許技術)が、アフリカから収益をもたらしているのです。

そして先述のエムペサは、ケニア国内でのスタートアップのインフラとしても機能しています。たとえばケニアの街中では、東南アジア諸国と同じように「市民の足」としてバイクタクシー(バイクのタンデムシート部に乗客を乗せて移動するタクシー)が普及しています。

ほとんどのバイクタクシーの運転手は低所得の若者で、銀行口座を持っておらず、銀行から資金を借りることもできませんでした。そのため多くの運転手は自分のバイクを所有しておらず、オーナーからバイクを借りていて、毎日の売上の約半分をオーナーに支払わなければならなかったのです。

日本のスタートアップが活躍している

そんな状況で日本のスタートアップ「Unchorlight」は、エムペサを使ったマイクロファイナンスサービスを始めました。このサービスの場合、毎日約500円をスマホで送金するだけでバイクが使用できるようになります。

それを1年半ほど続ければ、ローンが完済となり自分がバイクの所有権を手にできます。いきなりバイク購入費用の15万円は支払えなくても、1日500円ずつなら払い続けることができ、銀行口座や信用がなくてもバイクを手に入れることができるわけです。

最初は「その日暮らし」であったとしても、地道に仕事を続けていけば貧困から抜け出し、さまざまなモノやサービスを利用できるようになっていく。そういった可能性を示しているのが、エムペサの面白いところです。

ナイロビ市内に走る一般的なバイクタクシーの様子
著者提供
ナイロビ市内に走る一般的なバイクタクシーの様子。後部座席に座っているのは著者

ほかに日本からケニアに進出した企業の例としては、メディテック系のスタートアップ「アルム」があります。日本もケニアも、特に地方では医師どうしの情報交換が十分にできなかったりします。

そこでアルム社は医師がスマホでつながって情報交換することのできるアプリを開発・運営し、その仕組みをケニアに持っていきました。こうしたサービスも、社会課題の解決へとつながっていく大きな可能性を秘めています。