鎌田式文章術

京都大学大学院
人間・環境学研究科教授
鎌田浩毅

1955年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業。専攻は火山学。学生からの講義の評価は教養科目の中で1位。著書に『中学受験理科の王道』『一生モノの勉強法』『火山噴火』など。

文章は提出期限の数日前に完成させることが重要です。仮に期限まで10日あれば、8日目までに完成させるつもりで書き始め、2~3日間はバッファー(緩衝剤)として空けておきます。

なぜ前倒しして完成させるのか。理由は2つあります。1つは、思わぬアクシデントに備えるためです。8日目に完成させるつもりでも、突発的な仕事が発生して、予定通り文章作成が進まないケースがあります。しかし2~3日間のバッファーがあれば、スケジュールの遅れをカバーできます。もし予定通りに完成したとしても、次の仕事に取りかかれば時間を無駄にすることもないはずです。

もう1つの理由は、文章を熟成させるためです。デッドラインに追われながら文章を書くと、焦りが視野を狭めて発想も短絡的になりがちです。そこで意図的に完成を前倒しして、このまま提出しても最低限の責任は果たせるという状況をつくります。緊張状態から解放されると、それまで思いつかなかった斬新なアイデアが思い浮かぶことがあります。

バッファー時間は、自分の無意識と語り合うための時間です。文章のクオリティを高めるために、ぜひ余裕を持って作業に取り組んでください。