睡眠調査票の「両端が黒い」ことが理想
睡眠改善のための取り組みを大人と子どもが力を合わせて行うみんいくは、全校生徒対象の「睡眠朝食調査」、個別の「みんいく面談」(保護者とも連携)、全校生徒対象の「みんいく授業」(睡眠の振り返り、睡眠知識の習得、目標設定など)を柱に実践します。私がみんいくに取り組んだのは、当時の勤務中学校でした。
子どもたちは睡眠調査票に書き込んでみてはじめて、自分の睡眠の状態を知ります。こうして毎日の睡眠を記録してみると、当人が思っているほど睡眠時間がとれていなかったり、布団に入っている時間は長くても寝つくのに時間がかかっているなど、自分の「眠り」の問題が見えてきます。
「早く寝なさい」と言うだけでは子どもの心に響きにくいのですが、睡眠調査票の右端と左端のマス目に白が続く状態を一緒に見ながら、「もう少し早く寝て、両端が黒になるといいね」と言うと、子どもにも伝わりやすくなります。たとえたまたまその日だけだったとしても、早く寝て睡眠調査票の両端を黒に塗りつぶせたらうれしくなり、また今日も黒く塗れるように早く寝てみようかと行動が変わっていくのです。
そうやってほんの少し行動を変えてみて、睡眠調査票の両端が安定的に黒く塗りつぶされた理想的な状態が続いたタイミングで、朝起きたらものすごく気分がよかったり、1時間目から勉強に集中できたということが起こったとします。そんなとき、「睡眠って大事なんだな」と実感して、睡眠に意識が向くようになります。
「この日は寝ている途中で二度起きてるんだね、何かいつもと違ったの?」などと問いかけることがきっかけでコミュニケーションが生まれ、子どもの不安や緊張の原因が見えてくることもあります。教師が学校で接しているだけでは察知できない「睡眠のリアル」と「脳と心のリアル」までもが、睡眠を記録することから見えてくるのです。
入眠時間と起床時間を記すだけでもいい
毎日忙しいみなさんには、睡眠調査票の記入は面倒に感じられるかもしれませんね。以前、食べたものを記録するレコーディングダイエットが話題になりましたが、この方法も食生活の可視化です。記録することで、「意外に食べているな」「このままではヤバイ……!」という意識が働き、無理なく痩せられるという方法でした。
ラーメンや焼き肉など高カロリーのものを夜遅い時間に食べていたり、無意識のうちにお菓子を口に放り込んでいるなど、自分の食生活を「見える化」することで体重増加の理由が一目瞭然になります。
記録すること、可視化することは、生活習慣を見直し、変えるための大きなきっかけになるのです。睡眠習慣についてもダイエットと同様に、「見える化」がカギになります。
睡眠を記録する際のポイントはシンプルで、いつ寝ているのか、何時に起きているのか、まずはこの2つです。それだけでも十分ですので、ぜひ、記録をしてみてください。