副業にも残業代が発生する

1日のなかで2社にわたって仕事をする場合、問題になるのが残業時間です。

労働基準法は1日の法定労働時間を8時間までと定めています。8時間は1つの会社ごとではなく、1人の労働者ごとに考えます。

したがって、A社で8時間働き、同じ日にB社で3時間働くとすると、B社の労働時間はすべて時間外労働になります。

時間外労働における割増賃金は、あとから契約した会社が支払います。

理由は、あとから契約した以上、先に契約している会社の存在を知ることができるからです。

前述の場合、A社で法定労働時間の枠を使い切っているので、B社は割増賃金を上乗せした時給で給与を支払う必要があります(※2)

※2 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドラインQ&A」参照

「1日8時間」「週40時間」以上は割増賃金が発生

また、A社で1日5時間の契約で働く労働者がB社でも働く場合、1日8時間の枠内であれば時間外労働は発生しません。

つまり、B社でも1日3時間までは割増賃金が発生せず、それを超えたところから時間外労働になって割増賃金が発生します。

この考え方は週40時間にも適用されます。

例えば、A社で平日にフルタイムで働く人が土曜日にB社で働く場合、土曜日の労働はすべて時間外となります。

この場合も、B社が割増賃金を上乗せした時給で給与を支払うことになります。

なお、個人事業主や、フリーランスとして業務委託で副業をするときは労働時間の概念の範疇外になります。

なぜなら雇用ではなく、自分の裁量で仕事の受発注がコントロールでき、時間管理ができるためです。

村井真子『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)
村井真子『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)

副業として働くときは、こうした観点も踏まえて仕事を選ぶとよいでしょう。

雇用契約で副業をする際の時間外とは、どちらが本業でどちらが副業なのかではなく、また報酬の多寡にもよらず「契約の前後関係」で考えます。

雇用契約の順番は労働者本人の申告がなければ会社側ではわかりません。

面接や応募の段階で、既に働いている会社があることはきちんと伝えましょう。

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