60歳以降、賃金が大幅ダウンする厳しい現実

では、事業者がどのような形で義務を果たしているかと言えば、定年制の廃止が3.9%、定年の引き上げが25.5%、継続雇用制度の導入が70.6%となっています(図表1)。

【図表1】65歳までの雇用確保措置実施状況

必ずしも定年が65歳になるわけではなく、60歳でいったん定年を迎えた後、改めて労働契約を結び直すケースが多いようです。

法律の効果もあり、60歳以降も働き続ける人は増えているものの、労働条件が変更され、賃金が大幅に低下するケースがほとんどです(図表2)。

【図表2】性別・年齢階級別平均賃金(単位:千円)

大企業においても中小企業においても、50代をピークに平均賃金は右肩下がりになります。たとえば、従業員数10人以上の企業のデータを見ると、男性は55~59歳の44.71万円がピークですが、60~64歳は34.22万円、65~69歳は29.00万円と大幅にダウンしてしまいます。女性も同様、50~54歳の29.75万円がピークで、60~64歳は24.83万円、65~69歳は22.42万円となります。

「働く60~64歳」を支える2つの給付金

このような賃金低下を補塡ほてんするのが、雇用保険から支給される高年齢雇用継続給付です。

高年齢雇用継続給付には「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類の給付金があります。高年齢雇用継続基本給付金は、継続して雇用されている人が対象で、高年齢再就職給付金は、一度離職し、基本手当を受け取った後、再就職した人が対象です。

原則として、いずれも申請手続きは会社が行い、給付金は被保険者が指定した口座に毎月支給されます。60歳から64歳までの雇用保険の一般被保険者数が約343万人で、高年齢雇用継続給付の受給者数が約342万人ですから、雇用されて働く人のほとんどが、いずれかの給付金を受け取っているものと思われます(※1)

60歳以降の賃金下落を支える基盤として機能している高年齢雇用継続給付ですが、どのような人が対象になるのかを見ていきます。

(※1)厚生労働省「雇用保険事業年報(2021年)」