不動産市況が持ち直すことは難しい
中国で不動産市況の悪化になかなか歯止めがかからない。2020年8月、共産党政権は不動産融資規制である“3つのレッドライン”を実施した。それをきっかけに、急速に大手不動産デベロッパーの資金繰りは悪化した。大手デベロッパーである中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)、碧桂園控股(カントリー・ガーデン)、佳兆業集団(カイサ・グループ)の業況が軒並み悪化した。
最近では、かつて“アジア一の富豪”と注目された、王健林氏の率いる大連万達集団(ワンダ・グループ)が苦境に陥った。米ドルなどで発行された債券の利息、元本の支払いが難しくなる不動産企業は、中国全体に広がる恐れも高まっている。
中国政府の政策にもかかわらず、短期的に中国の不動産市況が持ち直すことは難しいだろう。マンション建設は落ち込み、土地や資材などの需要は減少せざるを得ない。地方政府の歳入も細る。これまでのように、景気刺激のため、大規模なインフラ投資などの経済対策を打ちだすことも難しくなる。中国の景気が本格的に持ち直すには時間がかかるとみるべきだろう。
大手デベロッパーの経営実態は数字以上に悪化か
足許、中国の不動産価格の下落は、経済のデータから確認できる以上に深刻とみたほうがよいだろう。年初以降、主要70都市の前月比でみた新築住宅価格は徐々に下げ幅を縮小したものの、本格的な回復には程遠い状況だ。大手デベロッパーであるエバーグランデやワンダの業況を見る限り、不動産市況の回復が本格化していないようだ。
7月17日、エバーグランデは2021年12月期(4760億元、約9兆円の最終赤字)、2022年12月期(1059億元、約2兆円の最終赤字)の連結決算を発表した。最終損益の赤字は11兆円を超えた。保有資産の評価額が切り下げられたことは大きかった。
会計監査法人は、過去2年間の財務諸表に対して“意見不表明”の立場だ。会計監査法人として、エバーグランデの財務データの正確性、信頼性を証明できない。不動産価格下落によって同社の経営実態は、想定される以上に悪化している恐れが高い。