シンガポールを足がかりに171店舗を展開
洋菓子、和菓子を主力商品とする小売りチェーン、シャトレーゼはコロナ禍の後でも成長を続けている。同社の従業員数は2200人。国内店舗は770店で、売り上げは1175億円(単体、2023年3月)。国内売り上げは前年比で17%も伸びている。さらに、同社は世界にも進出している。海外での売り上げも急速に伸びている。
初めて進出した国はシンガポールだった。2015年のことで、その後、現在までアジアと中東の9カ国・地域に171店舗を展開している。売上高に占める海外店舗の比率は約5%。海外店舗は増やしていく方針だから、今後はさらに伸びていくだろう。
同社が出している海外店舗の各国別内訳は次の通りだ。
シンガポール42店舗、インドネシア23店舗、マレーシア17店舗、タイ5店舗、ベトナム2店舗
ドバイ3店舗 ※2023年8月現在
シャトレーゼの海外進出が本格的に始まったのはシンガポールからだった。創業者で現会長、齊藤寛が少子高齢化の日本マーケットに危機感を覚え、熟慮の末、新しいマーケットを求めて海外へ出ていくことを決めたのである。
進出から8年でシンガポールNo.1に
進出を検討していた頃、シンガポールにある伊勢丹から「出店しないか」という話が来た。
ただし、売り場はたった5坪だった。それでも日本と同じケーキやシュークリームなど約40種類の商品を並べてみたところ、客が殺到し、たちまち売りきれたのである。それから8年間、シンガポールでは着実に店舗を増やし、現在は42店舗となっている。
東京都と同じくらいの面積に約560万人が暮らすシンガポールで42店もあるケーキショップはない。進出から8年間で、シャトレーゼは同国一の菓子チェーンになった。
わたしが見に行ったのは42店舗のうち、もっとも売り上げが多いヒリオンモールというショッピングモール内の店舗だ。同店の年間売り上げは日本円で約2億円。これは東京や神奈川にあるシャトレーゼ店と同じくらいの売り上げ金額だ。
ヒリオンモールはシンガポールの中心部からMRT(地下鉄)で30分ほどのブキパンジャン駅に直結している。店舗があるのは地下1階で、隣にあるのは「リャオリャオ」という地元のヨーグルトショップ。その隣はスターバックスだ。
ヒリオンモールは地元の人たちが日々の買い物に訪れるモールで、日本でいえば郊外のイオンモールのようなもの。観光客がやってくるところではないし、世界的ブランドショップがテナントになっているところでもない。