スーパースターの条件
イベントの成功には、サプライズが欠かせない。だから、みんなを良い意味で裏切ることが起こる確率を高めるような努力は常にしている。
高いお金を払い、貴重な時間を費やして会場に足を運んでくれた人たちが、「来て良かった」「面白かった」と言ってくれるかどうか。それには後味の良さが関係している。終わりよければ、すべてよし。ピークエンドの法則だ。
格闘技でいうならばセミファイナルやメインの試合を任せた選手たちが、どのように締めくくるのかにかかっているといっていい。
たとえ、前半にダラダラとした試合が続いたとしても、最後の最後に負のエネルギーをプラスに変えられさえすれば、今日はいい一日だったと、好印象を抱いて帰ってもらうことができる。
その確率をどうすれば高められるか。プロの格闘家、特にメインイベンターに求められるのは、そういうことなのだと思う。それをきちんと表現できる人こそが、スーパースターになっていくのだ。
大事なのは、いかに勝つのか、いかに負けるのか
RIZINの試合順は、基本的には私と広報事業部長の笹原圭一の2人で決めているが、メインを張れる選手というのは、決して多くない。そのため、おのずと「今回のメインは彼に任せよう」というのは決まってくる。
ただし、PRIDEの時代も、そしてRIZINでも、実力ナンバーワンの選手が必ずメインを張るわけではない。大会を見に来てくれた人たちに、格闘技のダイナミズムを、喜怒哀楽を享受して帰ってもらうのにふさわしい人を選んでいる。
それらを与えられるファイターの条件とは、まず勝敗だけに固執していないこと。特に日本人の場合は、負けの美学というのか、散り際の美しさを理解できる感性があるから、常にアグレッシブに攻める姿勢を見せられることが重要。
大事なのは結果ではなく、いかに勝つのか、あるいはいかに負けるのか、だ。
相手から一本を取るためには、攻めるしかない。そして攻めるということは、勝つ可能性が増える一方で、負ける可能性も増えることになる。だからこそ、負けを恐れずに、最後まで攻め続けられるかどうかがファイターの魅力となる。