「感謝力」の第一歩は、「感謝の記憶」を掘り起こすこと

子どものころに限りません。社会に出てからだって、会社の同僚や上司、趣味で知り合った人など、いろいろな人に助けられ、支えられて生きてきたはずです。

どんな人でも、ひとりで生きてきたわけではありません。感謝すべき人は、いっぱいいるはずです。

ただ、そのときには気づかなかったり、感謝したものの、それを言葉にしないまま忘れてしまったりしているだけなのです。

私は、まずそうした「感謝の記憶」を掘り起こすことが、「感謝力」を磨く第一歩だと思います。自分が多くの人に支えられ、助けられながら、それらの人とともに生きていることをしっかりと自覚するのです。

その作業は、言葉を換えれば、自分の心に“感謝の気持ちを育てる豊かな花壇”をつくるということを意味しています。

そこで、感謝の気持ちをいっぱい育てることでマインドを前向きにリセットしましょう。それが、この思いどおりにならない人生をよりよく生きることにつながるのです。

アジアのビジネスチームリーダーは、超高層ビルの景色を望む現代のオフィスワークプレイスで握手を交わすことによって、チームメイトの従業員の優れた業績チーム
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日本人が「ありがとう」といわれる回数が少ない理由

少し前のことですが、ネスレ日本が、全国の10代~50代の男女1000人を対象に、日本人の感謝行為に関する調査を行ないました。

それによると、日本人が一日に「ありがとう」という回数の平均は7.5回だったのに対して、いわれる回数は4.9回で、いう回数の約3分の2にとどまったといいます。

これは、本人は「ありがとう」といったつもりなのに、それが相手にうまく伝わっていないということを意味しています。

その結果、多くの人が、日ごろ「ありがとう」をいう機会より、いわれる機会のほうが少ないと感じているということです。

一日に「ありがとう」という回数が平均7.5回というのが、国際的に多いのか少ないのかはっきりとしませんが、少なくとも、日本人は感謝の気持ちを持って、いつもそれをきちんと口にするのが苦手なようです。

また、この調査は2013年に行なわれたものですが、それから10年ほど経ったいま、新型コロナウイルスの流行や、それに伴う在宅ワークの普及などで、人が直接ふれあう機会が大幅に減少し、感謝の気持ちを口にする機会はますます減っているのではないでしょうか。