7月から「最も危険な4カ月」がはじまる

それらのスズメバチの中でも、住宅地で増殖しているキイロスズメバチ(写真4)とコガタスズメバチ(写真5)は「都市適応型スズメバチ」と呼ばれ、人との摩擦が生じやすい危険な種と言えます。

(写真4)キイロスズメバチ。撮影=小野正人、無断転載禁止。
(写真5)コガタスズメバチ。撮影=小野正人、無断転載禁止。

一方、里山など自然の残された環境にはオオスズメバチという世界最大のスズメバチ種が生活しており、ハイキングや郊外学習などの際に深刻な事故を引き起こす事例が後を絶ちません。

スズメバチによる刺傷事故の発生には大きな特徴があります。それは、1年の中でも事故が7~10月の4カ月間に集中していることです。

この理由にはスズメバチの生活史が大きく関係しています。

スズメバチとのハチ合わせ――なぜ夏なのか?

例えばキイロスズメバチの生活は、4月の終わりごろ越冬(写真6)を終えて朽ち木や土中から出てきた女王蜂による造巣から始まります(写真7)。女王蜂は前年の秋にオスと交尾しており、腹部内の受精のうという小さな袋に精子を貯めており、それを使って受精卵を生み続けることができます。

(写真6)越冬中のキイロスズメバチの女王蜂。撮影=小野正人、無断転載禁止。
(写真7)営巣を開始したキイロスズメバチの女王蜂。撮影=小野正人、無断転載禁止。

女王蜂は、前年の晩秋にオスと交尾して腹部内にある受精のうという小さな袋に精子を貯蔵しています。たった1頭で巣造りを開始した女王蜂は、産卵の際にその精子を小出しにして使い受精卵を産むことができます。従って、産卵するたびにオスと交尾する必要がないのです。