※本稿は、茂木健一郎『強運脳』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
なぜわれわれは神社にお参りに行くのか
豊臣秀吉や徳川家康といった、日本を動かしてきた天下人の多くが神社を大切にし、参拝を続けてきたといいます。また、これまで成功を収めてきた偉大な企業人の多くも、積極的に神社参りをしてきました。
松下電器産業(現パナソニックホールディングス)の創業者で、「経営の神様」と呼ばれていた松下幸之助は神様を大切にしてきたことでも有名で、本社や事業所内のあちこちに神社をつくり、現在も同社には祭祀担当の社員がいて社内の社を管理しています。
日本人にとって神社は身近な存在です。商売繁昌の神様として知られる東京の神田明神にはビジネスパーソンが日々多く訪れますし、ある人たちは疲れた心を癒して運気を上げようと全国各地のパワースポットへ出かけたりもします。
なぜ、私たちは神社やパワースポットに行くのでしょうか。「苦しいときの神頼み」といいますが、神社に参拝したり、パワースポットに行くことで、今より少しでも運気を上昇させたいと願うからでしょう。
ただし、科学的には神仏にお祈りしたからといって、あるいはパワースポット行ったからといって、何らかのパフォーマンスが上がるというエビデンスはありません。それでも、自分ではコントロールできない、どんなに力を尽くしてもどうすることもできないことに対して、何とか神様のご加護を得ようと参拝し、手を合わせるわけです。
脳科学で考えるメリット
では、神社やパワースポットに行くことで、どのようなメリットがあるのか、運を引き寄せることができるのか、脳科学的に説明していきましょう。
脳科学の立場からいえば、神社に参拝したり、パワースポットへ行くことが意味するのは、それによって「自分の内面が変わる」ことにあると私は考えています。
神前で手を合わせ、日常の雑事から離れた空気の中で自分の心を整える。そうすることで、翌日からの仕事や日常生活に弾みがつくというわけです。
私自身も、実はよく神社やパワースポットに出かけることがあります。それは神様に何かをお願いするのではなく、むしろ神様の前で「自分はこんなことをする」と誓う意味を込めているのです。事を成すのは、あくまでも自分自身だからです。
目の前のことに集中し、手を動かし、智恵を絞り、一所懸命に働く。その心の準備をするために、時間やお金を使って神社やパワースポットに出かけ、そこで祈ることが心を整えるうえで有効なのです。