「中身」は二の次で、「事実」さえあればいい
解雇が法的に有効だと認められるハードルは非常に高い。それでも何とかしてハードルを飛び越えたい時に必要になるのが、注意指導の事実と実績だ。
何度も注意指導を行い、更生の機会を与えていたにもかかわらず、いっこうに問題行為が改善されなかった。よって退職勧奨を行ったが聞き入れてくれなかったため、断腸の思いで解雇した――。従業員が抵抗した際は、このようなストーリーが会社側には求められる(※始末書、減給、降格、配置転換、自宅待機なども加えたい)。
もちろん注意指導自体が不適切だったり、パワハラに該当したりするケースは十分に考えられる。この点は出る所へ出た際に争点になりがちだが、それはそれ。注意指導の「中身」は二の次で、注意指導したという「事実」を企業側は求めているのではないか。労働者側は性善説ではなく性悪説で、企業側の言い分に耳を傾けるのが得策だろう。
社長に直談判すると、自宅待機の指示が…
それでは実際に注意指導を受けた場合、そこから巻き返して退職勧奨を免れることはできるのだろうか。これは残念ながら、ほとんど望み薄だと思ったほうがいい。
私は負けず嫌いの性格だ。最初に訴えた会社では在職中、社長に対し「この会社のやっていることは違法です。未払いの残業代を支払ってください」と直談判したことがある。
この時はすでに5回以上の退職勧奨を受けており、仕事はもちろん、会社の鍵や携帯などの備品はすべて没収。文字通り失うモノは何もない状態だったので、窮鼠猫を噛むで会社に盾突いた。結果、次の出勤日から自宅待機指示があり、そこから約2週間後に解雇通知書を渡された。
転職した2社目でも、総務部長から「勤務時間外も電話対応するように。できないのならお辞めいただくことになるかもしれない」と退職勧奨を受けた際、「それって違法労働しろってことですか? 労働基準監督署に相談しますよ」と言い返した。結果、翌日から自宅待機指示。5日後に解雇通知書を渡されている。
この2つの事例の共通点は、「違法労働を指摘したとたんに自宅待機指示を出され、最終的にクビを宣告される」という流れだ。会社側からすると「こいつは問題社員だ」という結論はすでに出ているわけで、私が何を反論しようが(むしろ反論すればするほど)火に油を注ぐ形になったのだろう。このままではまずいという会社の焦りもあったのかもしれない。