ChatGPTの学習量が十分でない会社や業界は要注意

これらの具体例からわかるように、ChatGPTはビジネス戦略や意思決定の補助に大きな価値を提供します。企業は、ChatGPTを活用することで、効率的で効果的な意思決定を行い、競争力を向上させることができます。

ただし、ChatGPTの学習量が十分でない会社や業界についての個別の分析や戦略立案は、学習量が十分な有名企業などと比較して、回答の精度が落ちることがあります。例えば「○○についてSWOT分析をしてください」という質問を入力した場合、マイクロソフトと実業之日本社では、得られる回答の精度に差があります(最後に実際の回答を載せます)。

それらを解消するためには、プロンプトをより工夫する必要があります。業界や企業に関する情報をできるだけ詳細に入力することで、ChatGPTが適切な回答や提案をしやすくなります。

最終的にはChatGPTの回答はあくまで一つの参考であり、チーム内での話し合いや他の情報源を吟味して判断することが大切です。

多くの中小出版社に当てはまる納得の回答

質問例1
実業之日本社という日本の中小出版社についてSWOT分析を行ってください。

実業之日本社は、日本の出版社であり、多くの書籍や雑誌を出版していることで知られています。以下に、実業之日本社に関するSWOT分析を行います。

【強み(Strengths)】

1.歴史と経験
実業之日本社は、創業以来100年以上の歴史があり、出版業界での豊富な経験を持っています。

2.多様なジャンル
同社は、文学、歴史、ビジネス、ライフスタイルなど、幅広いジャンルの書籍や雑誌を出版しており、多様な読者層に訴求できる強みがあります。

3.定評のある著者とのコラボレーション
実業之日本社は、著名な作家や専門家とのコラボレーションによって、品質の高いコンテンツを提供しています。

4.地域密着型の出版
地域に根ざした出版物やイベントを展開することで、地域コミュニティとの関係を深めています。

【弱み(Weaknesses)】

1.デジタル戦略の遅れ
電子書籍やオンラインコンテンツへの対応が遅れている可能性があり、市場シェアの獲得が難しくなっているかもしれません。

2.競合他社との差別化
出版業界は競争が激しく、他社との差別化が難しい場面があることが弱みとなる場合があります。

3.経済状況への影響
出版業界は、経済状況や消費者の支出に大きく左右されるため、不況時には業績が低迷するリスクがあります。

【機会(Opportunities)】

1.デジタル市場への参入
電子書籍やオンラインコンテンツの市場は拡大しており、積極的なデジタル戦略によって新たな収益源を開拓できるチャンスがあります。

2.海外市場の開拓
海外の読者に向けた翻訳版やコラボレーションによって、新たな市場を開拓することが可能です。

3.エコフレンドリーな取り組み
環境に配慮した出版物の開発やリサイクル、持続可能な資源の使用など、環境にやさしい取り組みを行うことで、企業イメージの向上や新たな顧客層の獲得が可能です。

4.オンデマンド出版
印刷や在庫コストを削減できるオンデマンド出版に積極的に取り組むことで、効率的な運営が可能になります。

【脅威(Threats)】

1.競合他社との競争
出版業界は競争が激しく、新規参入や他社との競争によるマーケットシェアの低下が懸念されます。

2.電子書籍やオンラインコンテンツの普及
電子書籍やオンラインコンテンツの普及に伴い、紙媒体の需要が減少する可能性があります。

3.著作権侵害
インターネットの普及により、著作権侵害が増加し、収益の減少や企業イメージの悪化が懸念されます。

4.経済状況の変動
経済状況の変動により、消費者の支出が減少し、出版物の売上が低迷するリスクがあります。

以上のSWOT分析を通して、実業之日本社は歴史と経験を活かし、多様なジャンルの出版物を提供していますが、デジタル戦略の遅れや競合他社との差別化が課題となっていることがわかります。機会としては、デジタル市場への参入や海外市場の開拓が挙げられますが、競合他社との競争や電子書籍の普及などの脅威も考慮する必要があります。

以上妥当な回答にはなっていますが、やはり学習量が少ないこと、またその回答の背景にある情報が「出版業界全般」であることが推測され、多くの中小出版社に当てはまる内容の分析結果になっているといえるでしょう。ただし大半が正論であり、頷く業界関係者は多そうではあります。一方、地域密着型の出版社という点は「?」となりました。

iPadと平積みのペーパーバックの本
写真=iStock.com/221A
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