株式に投資する際、割安銘柄を発掘して投資する「バリュー投資」と、成長性に着目する「グロース投資」がある。過去のデータでは、グロース投資よりもバリュー投資のほうが好成績な場合が多い。そして、現状の「バリュー指標」に照らせば、日本株はおしなべてかなりの割安水準だ。

現在の東京証券取引所第一部上場銘柄のバリュー指標の平均値は、PBR(株価純資産倍率)=0.8倍、PER(株価収益率)=17倍、配当利回り2.3%である(東証HPより。2012年6月末、連結)。金利や景気など投資環境も合わせて考えなければならないが、個人投資家はどう判断すべきだろうか。

まず、配当利回りは年間の配当金額を株価で割って算出する。主に金利と比較されるが、将来の利益・配当の成長率見通しが低いときや、投資家が株式のリスクを強く意識する場合、株価が下がって配当利回りが上がる。数年前まで、株式の配当利回りは、常に長期国債利回りを下回っていたが、金融危機以降、逆転現象が常態化してきた。

PBRは、株価を1株あたり純資産で割ったものなので、PBR1倍割れは、その会社の発行済み株式を全部買い占めた後、会社を解散させて保有資産を現金化すれば、利益が得られることを意味する。

つまり、PBR1倍割れの株価は会社の資産に対して安いということだが、それだけで飛びつくのは早計だ。

会社を解散させたとき、社員への退職金支払いが発生したり、保有資産を帳簿上の価格で売却できなかったりすることも考える必要があるし、倒産していない会社を清算することは現実的ではない。

PBRの1倍割れは、投資家がその会社の経営を評価していないと解釈することもできる。株価は、理論的には現在の純資産価値と、その純資産を使って行われる経営に対して株主が要求する利益を超過する将来利益の割引現在価値とを合計したものだ。PBRが1倍を割るのは、いわば「経営者としての落第点」である。

これらの理由を考慮に入れると、PBR一倍割れを、単純に「割安だから買い」とは言えない。

一方、PBRと双璧をなすPERは、株価をその企業の年間税引き利益で割って求められる。株価も企業資産の価値も将来の利益を反映すると考えれば、PBRよりも汎用性がある。

ただ、企業の利益は期によって大きく変動する。特に昨年の震災やタイの洪水のように大災害や円高など不測の事態が生じれば、利益が大幅にダウンするので、その都度、投資環境が元に戻ったときの収益がどうなるのかということを考慮に入れたうえで、PERを修正して使う必要がある。しかしこれは個人投資家にとって容易なことではない。

このように考えていくと、目下、日本株が割安かどうかを判断するに際しては、配当利回りとPBRで判断するのがよさそうだ。配当利回りが高く、PBRは1倍を割り込んでいる銘柄を割安銘柄候補と考えるとよい。

確かに、PBRの1倍割れは、株主の、経営者に対するレッドカードとも言えるが、逆にトップを少しましな経営者に入れ替えるだけで、変化率がプラスになる可能性がある。

今の日本株は、やはり歴史的な割安水準に放置されていると言ってよいのではないか。人口が減り、政治家は信用されておらず、投資家はリスクに対して敏感になっている。この状況はしばらく変わらないだろうが、これらが今見えている以上に悪くなる一方とは思えない。企業も工夫するし、海外の成長市場もある。割安株に対する儲けが報われる可能性はそれなりにある、と私は思う。

(構成=鈴木雅光)
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