“4強”の市場に新規参入を促す狙いか

反対に、事業規模が小さく商品開発のスピードを高めづらいビールメーカーにとって、第3のビールや発泡酒の投入に対応して収益を増やすことは難しくなるだろう。このように、税率の違いは、ビール市場におけるシェア獲得競争に影響する要素の一つだ。より公平な競争環境を整備するために、財務省は“よく似た”タイプのお酒にかかる税率を一本化する。

また、わが国では“クラフトビール”への需要も高まっている。大量生産されるビールと異なる風味を求める人の増加によってクラフトビールメーカーは増加した。その一因として、2018年に政府がビールの定義を改正したことは大きい。

改正によって、従来約67%とされた麦芽比率は50%に引き下げられた。また、一定の範囲内で使用できる副原料として、果実、香味料(コリアンダーなど)が追加され、クラフトビール人気は高まった。新しい事業者の成長を促すためにも、ビール系飲料の税率を一本化することは重要だ。

サントリーはいち早く割安商品を新発売

税率の引き下げを控え、国内の缶ビール市場では大手メーカーを中心に10月以降の値下げが発表されている。2026年の税率一本化を前に、各社は消費者の支持をより多く獲得し、自社ブランドの成長につなげようと陣取り合戦が鮮明化している。

先手を打ったのは、サントリーだった。2023年4月、同社は新ビールブランド、“サントリー生ビール”を発売した。価格帯は、比較的価格帯の高い“ザ・プレミアム・モルツ”、価格帯の低い第3のビール“金麦”、の中間に位置する。想定される競合ブランドはアサヒのスーパードライだろう。

サントリー生ビールの店頭での販売価格は、競合他社の類似商品より10円ほど安い。5月には、プレミアムモルツの値下げも発表された。サントリーは今回の酒税引き下げをきっかけに、低価格帯から高価格帯までの缶ビール市場で、より多くのシェアを手に入れようと他社に先駆けて動いた。