高価格の「フルオープン缶」で攻めるアサヒ

発売後、サントリー生ビールは急速に消費者の支持を獲得した。特に、滑らかな口当たりと飲みごたえの両方を重視した商品開発戦略は、多くのビール愛好家の胃袋をつかんだ。2023年の販売計画は上方修正された。

サントリーの攻勢に対応するために、キリン、アサヒなども缶ビールの値下げ実施を発表した。注目したいのは、アサヒだ。7月、同社は高価格帯の新しいブランド、“アサヒ食彩”を発表した。サントリーのプレミアムモルツよりも価格は10円ほど高い。

その分、消費者により多くの満足感が提供されるよう、多くの工夫が凝らされた。フルオープン缶の採用によって缶ビールであるにもかかわらず生ビールのような飲み心地が体験できる。希少ホップの利用による芳醇ほうじゅんな味わい、スーパードライで養ったキレのある鮮烈な喉越しの両方が実現された。

一方、税率が引き上げられる第3のビールなどに関しては、値上げが実施されている。それによって各社はコストを吸収しつつ、家庭用の缶ビール市場のシェアを増やそうとする陣取り合戦は熾烈化している。

ビール
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暑さと物価高ラッシュの中、ありがたい存在に

例年、7月、8月にビールの売り上げは増加する傾向にある。炎天下の日差しが降り注ぐ中、クーラのよくきいた部屋で、よく冷えたビールを喉に流し込む、あの爽快感は何物にも代えがたい。今年の夏は、値下げ、さらには新商品の投入によって、より充実したビールタイムを満喫できそうだ。

家計調査によると、2010年以降、価格が相対的に低い発泡酒や第3のビールを買い求める消費者は増えた。本当なら芳醇なホップの香りなどを楽しみたいが、賃金が伸び悩む中ではできるだけ節約を心がけざるを得ないというのがビール愛好家の本心だったと考えられる。その状況は徐々に変化するだろう。

足許、わが国では名目ベースの賃金が徐々に上向き始めた。優秀な人材を確保するために賃金を上げなければならないことに気づく企業も増えている。経済全体で見ると、物価上昇のペースを上回る賃金の上昇は実現できていないが、徐々に賃金が上向く兆しがで始めた。酒税の引き下げもあり、缶ビールはより手の届きやすい商品になるだろう。