NISAは本来、積立投資のための制度

そもそも、2014年1月にNISAが創設された当初から、金融庁は長期的な積立投資によって資産形成をするためのツールとしてNISAを利用してもらいたいと考えていました。しかし、すべての公募投資信託と株式の個別銘柄も対象にしたことから、短期的に大きく値上がりしそうな個別銘柄や投機性の高い投資信託を買い付け、実際に大きく値上がりした時に、その値上がり益を非課税で享受したいという投資家が積極的に活用するようになってしまいました。

NISAの非課税投資枠は、制度が始まった当初、年100万円でした。しかし、それだと毎月の積立投資には不向きです。12カ月で割ると、1カ月あたりの積立金額が8万3333円となり、端数が生じてしまうからです。そこで金融庁は、2016年に非課税投資枠を年120万円に拡大し、毎月10万円という切りのいい金額で積立投資ができるようにしました。

このことからも、金融庁がNISAを長期積立による資産形成をするためのツールとして位置付けていたことが分かります。

NISAの文字と貯金箱
写真=iStock.com/SRT101
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大儲けを狙った人たち

ところが、現実にNISAを積極的に活用したのは、やはり短期的な値上がり益を狙う個人投資家でした。そうした投資家には、毎月10万円ずつ積立投資をするなどという発想は、恐らくなかったと思われます。短期で大きな値上がりが期待できそうな中小型株やレバレッジ型の投資信託などを非課税投資枠いっぱいに一括で買って、大きく値上がりしたところで売却して大儲けを狙ったのです。

そこで金融庁は、2018年1月から「つみたてNISA」を新たに創設しました。これによって、2014年1月からスタートした当初のNISAには「一般NISA」という名称が与えられることになり、現在に至っています。

つみたてNISAは、株式の個別銘柄は対象としていません。金融庁が「長期・積立・分散投資」にふさわしいと考える基準に合った投資信託だけを対象にしたのです。そして、一般NISAとつみたてNISAの併用を認めず、いずれか一方の利用しかできないこととしました。

つみたてNISAの非課税投資枠は、年間40万円と、一般NISAと比べてたったの3分の1です。ただ、非課税期間は、一般NISAの5年間よりも大幅に長い20年間とされました。

このように、本来の目的である、投資信託の積立投資による長期的な資産形成に合ったものへと改善を重ねてきたのが、これまでのNISAの歴史なのです。