仕事相手からの連絡にはすぐに応じるべきなのか。行動経済学コンサルタントの相良奈美香さんは「人はサービスの内容よりも、かかった時間を評価する。きちんと時間をかけたほうがいい場合もある」という――。

※本稿は、相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Moyo Studio
※写真はイメージです

人は「サービスの内容」よりも「かかった時間」で評価する

いかに時間をかけずに効率よく働くかは、今も昔も変わらないビジネスパーソンの課題となっていますので、生産性が求められる時代、ぜひ行動経済学の理論を活用してほしいと思います。

なぜなら、行動経済学とは「人間の行動の原理」を解明する学問だからです。これがわかれば、自分という人間を動かすことも可能になります。

しかしながら、「あえて時間をかけたほうがよいケース」もありますので、挙げておきます。それが、行動経済学の理論の一つである「デュレーション・ヒューリスティック(Duration Heuristic)」が働いてしまうケースです。

デュレーションは「期間」や「時間」などの意味。ヒューリスティックは、直感的、瞬間的にある判断をしてしまう認知のクセです。つまり、デュレーション・ヒューリスティックとは、「サービスの内容よりも、かかった時間で評価してしまう認知のクセ」のことを指します。

「解錠3分で2万円」は妥当か

具体例を出しましょう。例えば、あなたはオートロックのマンションに住んでいるとします。あるとき、鍵を室内に置いたまま外に出て、ドアを閉めてしまいました。家族も皆外出しているし、どうやっても家の中に入れない。仕方なく専門の技術者に来てもらい、技術者の手にかかればものの3分で解錠できましたが、料金として2万円かかりました。

このときあなたはどう感じますか? 「たった3分で2万円も取られてしまった」と思う方が大半でしょう。

しかし、よく考えてください。合理的に考えれば、時間が短かろうが長かろうが、「鍵を開けてもらう」という受けるサービス自体は変わりません。それにもかかわらず、かかった時間であなたの評価は変わってしまう。これは実に非合理的です。これがデュレーション・ヒューリスティックです。