過去10年間以上も納付率40%前後で改善の兆しなし
筆者が、「免除者を含めた納付率」を計算し直すと、2010年以降ほとんど横ばいとなっており、表向きの納付率の数字と比べて、およそ半減していることがわかる(図表2参照)。しかも、免除者を含む納付率は、過去10年間以上も40%前後で改善の兆しはほとんど見られないことは子供でも理解ができる。
「免除者が増えても、(免除者は)将来受け取る年金額が減る仕組みのため、国民年金財政への影響は大きくない」という年金官僚の論理を代弁した記事もあった。だから、厚労省は未納分の保険料徴収にさほど意欲を見せないのだ。これが国税庁なら話は違う。もし納税義務者を免除すれば財政赤字が増えてしまうため、死に物狂いで徴収に奔走するに違いない。
ただ、この年金官僚の「免除者が増えても国民年金財政への影響は大きくない」という論理自体は誤ってはいない。しかし、よく考えてほしい。免除者などが増加することで保険料の負担者数が減れば、すでに存在している3500万人もの国民年金受給者の年金財源はどうなるのか。
実は、未納付者や免除者が増えても、基礎年金を通じて会社員の厚生年金などの保険料から自動的に補塡される仕組みがあり、心配はないのだ。
これは基礎年金の財源が、国民年金や厚生年金・共済組合などからの拠出(資金提供)で成り立っているためだ。その拠出比率の基準も、本来は各制度の被保険者数であるべきだが、現実には保険料の負担者数で案分されている。
つまり、国民年金の未納付者や免除者がいくら増えても保険料負担者が減るだけで、その分は給与から強制的に徴収される会社員の負担率が高まるだけとなる。
このように、年金保険料を「取れるところから取る」という安易な論理で、保険料の徴収が困難な国民年金制度を救済することが、1985年に設立された基礎年金制度の大きな目的のひとつであった。この事実は国民にほとんど知られていない。理由はマスコミの勉強不足か、あえて積極的に報じないからである。