富山県の危機感を裏付ける厳しい調査結果
県の関係者は、当時こんなことを言っていました。
「北陸新幹線が金沢まで通じると、富山はスルーされて、観光客は全部金沢に取られてしまうのではないか」
実際、新幹線開業半年後に富山国際大学現代社会学部がアンケート調査をもとにした「金沢を訪れた観光客から見た富山県観光」によると、
と分析しており、富山県の危機感が裏付けられる結果となっています。
2015年の観光客増加数は17.5%で、石川県を上回る
では実際はどうだったのでしょうか。
2015年に北陸新幹線が開通してから1年で金沢を訪れた人は20%増の1千万人を超え、兼六園の入園者数は前年比1.5倍になったといいます。
金沢は海の幸も豊富で古くから「金沢料理」と呼ばれる日本料理も進化を遂げていて、「金城樓」に代表される古くからの料亭、「銭屋」「つる幸」(のちに閉店)などの由緒ある割烹とともに、「片折」「さかい」といった新しい店が増えました。
近年は寿司人気も高く、「すし処めくみ」「乙女寿司」「鮨 志の助」といった有名店は予約が取れないほどの勢いとなっています。
北陸に行くなら金沢にまず行こうと考えるのは当たり前のことかもしれませんが、当の金沢市が予想していた人数をはるかに上回る観光客だといいます。
ところがです。
危機感を募らせていた富山県も同様に伸びているのです。2015年の観光客増加数は17.5%で、15%の石川県全体と比較すればむしろ勝っています。2015年から2018年まででも30%増になっているのです(「北陸新幹線開業5年目の交流人口変化がもたらす富山への経済波及効果」日本政策投資銀行編より)。
その背景には富山の食が世界から「発見」されたという理由がありました。2016年に発表された『ミシュランガイド富山・石川(金沢) 2016特別版』では、3つ星を獲得したのは富山市内の「日本料理 山崎」のみ、石川県はゼロだったのです。
しかし、富山県が「食」で伸びた象徴的なレストランは山崎ではないと私は思っています。