“柱”の時透無一郎に自らを投影した旧統一教会の元信者
アニメ「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」(フジテレビ系列)は、6月18日にて最終回を迎えました。なかでも、“上弦の伍の鬼”である玉壺と、“柱”の一人である時透無一郎との戦いのシーンについては、ひとかたならぬ思いでテレビを見ていました。
と言いますのも、この鬼との戦いがどうにも現在、旧統一教会の解散命令請求に向けて、巨大な組織に立ち向かう、元信者、宗教2世、被害者を守る弁護士、被害者家族らの置かれている姿に重なってみえてしまうからです。『鬼滅の刃』ではいくつかのシリーズがありますが、特に今回の「刀鍛冶の里編」ではその思いを強くしました。
『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎という少年はある日、外出しているうちに、家族が鬼によって惨殺されてしまいます。唯一、生き残った妹(禰豆子=ねずこ)ですが、鬼に襲われて、その血を受けて自らも鬼となってしまいました。しかし炭治郎は妹を人間に戻すための方法を探すため、自ら鬼を倒す(鬼殺隊=きさつたい)の剣士として立ち上がります。そして、世の中の人たちを鬼の攻撃から守るために、身を賭して、命の限界まで戦い、鬼を倒していきます。
このように鬼たちは平穏に暮らすなかにやってきて、人々を襲い、次々に家族の日常を壊していきます。その姿はまさしく普通に暮らす人たちを信者にさせてその家庭を壊すだけでなく、多額の献金をさせて経済的な苦しみを家族に負わせる旧統一教会の手口そのもののように見えたのです。
旧統一教会の信者は人を直接殺すことはないかもしれません。しかし、教団の教え(統一原理)は、この世の親はサタンの父母であり、文鮮明教祖こそが、神の側の真の父母としています。この思想に染まることで、自分の親をサタンと見て行動を取ることになります。「なぜ、わが子がこんな姿になったのか」と、多くの人たちを悲しみの淵に陥れます。以前には、大学生の息子・娘が次々に教団の信者となることで家族が崩壊して「親泣かせ原理運動」といわれたこともありました。多くの人の人生が、統一原理によって狂わされてしまうわけです。
鬼のグループには、鬼舞辻無惨という絶対的な権力者の元に、十二人の鬼(十二鬼月)という存在がおり、玉壺は5番目に強い階級の鬼とされています。
玉壺は次々に壺を出してきて、そこから出てくる魚のようなものが人々に襲いかかり食っていきます。見る人によって、さまざまな見方ができるかと思いますが、私はこの壺による攻撃が、どうにも旧統一教会の信者らが人々に高値で売りつけた霊感商法のように思えてなりませんでした。
信者らは「先祖代々から受け継がれる悪の因縁によって不幸になっている」と、占いや家系図などを通じて、悩みのある人を説き伏せ、また弱みにつけこみ、壺や多宝塔・印鑑などを売りました。人々が必死で稼いだお金を、霊感話を使って奪ったのです。その結果、身ぐるみはがされて、ご飯一杯を食べるのが精いっぱいという困窮者を出してしまう悲惨な状況を招きました。