足の血管の老化は、突然死のリスクを高める

物言わぬ臓器である血管が老化したときには、「足が口ほどに物を言う」のです。そして、足が動脈硬化のサインを出したときには、全身のほかの部分でも同じように血管の老化が進んでいる可能性が高いと考えてください。

実際、足の動脈硬化(下肢閉塞へいそく性動脈硬化症)と診断された人の6割以上が、狭心症や心筋梗塞などの「心臓病」か、脳梗塞などの「脳血管疾患」のいずれか、または両方をあわせ持っていることが大規模な研究で明らかになっています。私が診てきた患者さんのなかにも、「歩くと足が痛むんです」と、足の動脈硬化が最初に見つかって、全身を詳しく調べたら実は脳梗塞があった、狭心症があったという方が何人もいらっしゃいます。

足をきっかけに、心臓や脳の血管病が見つかることは珍しくないのです。

血管の老化が進んでいても、じーっと静かにしていて、あるとき突然、血管が詰まったり切れたりして叫び声を上げるのが、脳や心臓です。脳や心臓の血管が切れたり詰まったりすれば、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞といった命に関わる大病につながります。突然死することもあるわけです。たとえ命は救われたとしても、後遺症に悩まされることも多いです。

心臓発作
写真=iStock.com/Suze777
※写真はイメージです

長生きできても健康を維持できるかは別問題

例えば、脳梗塞の場合、発症しても約9割は助かります。医学の進歩とともに救命率が上がったことは喜ばしいこと。ただ、生き残った方の約半数に、重度の麻痺や認知症が残ります。そこから大変なリハビリ生活が始まります。

急性心筋梗塞の場合は、突然死のリスクがもう少し高く、3~4割が発症直後に亡くなってしまいます。そして、一命はとりとめた方も、後遺症として心臓の一部に動かない部分ができ、心不全を患うことが多いのです。

よく「ピンピンコロリがいい」といいますよね。長患いすることなく、元気なまま長生きして、最期はコロリときたい、と。ところが現実は、そう理想通りにはいきません。今、日本人の「平均寿命」は、男性81.47歳、女性87.57歳です(厚生労働省「令和3年簡易生命表」より)。

それに対して、心身ともに自立して健康的に生きられる期間である「健康寿命」は、2019年の数値で、男性72.68年、女性75.38年です(令和4年版「高齢社会白書」より)。平均寿命と健康寿命の差は、男性で9年、女性に至っては12年ほどあります。ピンピンとは生きられない、何かしらの支障を抱えながら生きる期間が、男女ともに10年前後あるのです。

脳や心臓の血管事故を起こすと、ピンピンコロリは遠のきます。「ピンコロリ」と突然死してしまうか、「ピンピンコロリ」と長生きするか……。だから、血管事故を起こさないように血管を守ることがとても大事なのです。