歩くスピードが遅い人は要注意

血管は、「物言わぬ臓器」といわれます。老化が進んでも、初期の頃には、何の症状も出ないからです。何らかの自覚症状が出たときには、すでに動脈硬化がすっかり進行して、大事な血管が狭くなったり詰まったりしていた、ということが多いのです。そのため、心筋梗塞や脳卒中といった血管病は「突然死が怖い」といわれるのですね。

自覚症状のないまま動脈硬化が進行して、あるとき、大変な血管事故を起こす――。血管が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれる所以ゆえんです。しかし、脳卒中や狭心症・心筋梗塞を発症するよりも早い段階で、下肢の動脈硬化がわかりやすい症状で出ることも少なくありません。足で全身の動脈硬化の進行に気づくことができれば、心臓や脳での大事故に至る前に、対処することができます。

以下の5項目で該当するものはありますか? 当てはまるものがあっても、「まぁ、よくあること」と、あまり気にとめていなかったかもしれません。でも、これらは実は、足の血管力が衰えてきたサインなのです。

サイン① 歩くスピードが遅い

歩く速度が遅い、特に同年代の人と比べても遅いときには何らかの原因があります。筋肉や骨の衰えを疑いがちですが、足の血管力の低下も原因の1つなのです。速く歩くには、筋肉をたくさん動かすために、たくさんの酸素が必要になります。つまり、血流が大事です。足の血管力が低下して、血行が悪くなっていると、ちょっと速く歩こうとすると血流が足りなくなってしんどくなります。だから、おのずと歩くスピードが遅くなるのです。

しびれの原因は神経だけではない

サイン② 冷え、しびれ

冷えは、それこそ「よくあること」と思う人が多いかもしれません。実際、若い人も含めて手足の冷えを感じている人は多いですが、これも血管力が低下しているサインです。末端の血管が開きにくくなって血行が悪くなると、末端まで十分な血液が行き渡らなくなります。そうすると、足先が冷たくなるのです。同様にしびれも、血行が悪くなっているサインの1つです。

手首がしびれている人
写真=iStock.com/Doucefleur
※写真はイメージです

しびれと聞くと「神経が悪いのかな」とも思うかもしれません。でも、神経に酸素と栄養を渡しているのも血管なので、血行が悪くて神経に十分な血液が行き渡らなくなると、しびれが生じます。足の動脈硬化の初期症状が、冷えとしびれです。「たかが冷え」「たかがしびれ」と思わず、足の血管力が低下しているサインの1つであることを覚えておいてください。