他社製品の不満を100個挙げる
プレゼン会議では担当者が大山健太郎氏から、必ずといっていいほど投げかけられる言葉があるとマネージャーは明かした。「その商品、どこが『なるほど』や」だ。「その質問に確実に答えるため、我々は他社の製品を使い倒す」と技術者としての日常を語った。
アイリスの技術者たちは他社製品を自宅で実際に使ってみて、不満や文句につながる「マイナスポイント」を見つけることに余念がない。家電製品ならば稼働している際の騒音が大きい、操作ボタンの配置が悪くて扱いづらい、本体が重すぎて1人では持ち運べないといった基本的な特徴が挙げられる。
これらに加えて「緩衝用の発泡スチロールが引っかかって段ボール箱から取り出しにくい」といった何気ない内容まで、開発担当者が実際に使ってみて感じた全ての不満や「失敗」が対象となっていた。「開発チームで最大100個は不満を挙げる」とマネージャーは実態を明らかにした。
そして100個の不満や失敗のうち、自社の技術で解決できるものを選び抜いて新商品に反映させる。技術者が他社製品の不満を解消し、プレゼン会議で「誰よりも私自身がこの新商品を買いたい」とトップを説得できたとき、プロジェクトにゴーサインが出る。そんな体験談を語っていた。
こんな過程を経て消費者から「なるほど」の声を引き出した商品は強い。2016年10月下旬に発売したヨーグルトメーカーはセ氏25度から65度まで1度刻みで温度を設定できる機能を持たせて、甘酒や納豆も自宅で作れるようにした。当初の年間販売目標は4万台だったが、販売開始から9カ月で10万台以上を売るという予想を超える実績を残していた。