子どもにはどのように財産を残せばいいのか。医師の和田秀樹さんは「子どもにお金を残してもトラブルの種になるだけだ。買い物には前頭葉を刺激し、脳が活性化する効果もある。我慢せず自分のために使ったほうがいい」という――。
※本稿は、和田秀樹『シン・老人力』(小学館)の一部を再編集したものです。
子どもにお金を残すのは「トラブルの種」
「自分自身のためにも、そして子どものためにも、後の世代に資産を残す必要はない」
というのが私の考えです。
デフレの時代が長く続いてきましたが、あと10年、20年も物価や給料が上がらないとは考えにくい状況です。インフレの時代にお金が目減りするリスクも考えると、今、周囲や自分のために使ったほうがいいと思います。
私は長年、高齢者の医療に携わってきましたが、子どもにお金を残すと、むしろトラブルの種になることが少なくないのです。
子どもがひとりならともかく、複数の場合や、遺産が多い場合、相続に注意が必要なのはもちろんです。
しかし、遺産が少なく、相続税がかからないくらいのお金でも、相続をめぐって泥沼のトラブルが発生し、こじれていくことがあります。
その様子を、私は幾度となく見てきました。
少しでも多くの財産を手に入れようとする
親が80代や90代で亡くなった場合、子どもは60代というケースが多いのではないでしょうか。
60代ともなれば、すでに退職している場合もあり、老後の不安から少しでも多くの財産を手に入れたい、という気持ちになりやすいのです。
結果、財産をめぐって兄弟の意見がかみ合わないことが増えてきます。