「学歴主義は終わる」という大見出し

その一つがキャリア系企業に携わる人たちが連発した、「学歴主義は終わる」という、光を抱かせるフレーズです。

「就職協定でブレイク! 『就職自由化』時代がやって来た!」

これは1997年11月、就活を控える学生たちの愛読雑誌だった『就職ジャーナル』の表紙に書かれた大きな見出しです。53年から40年以上続いた就職協定をやめる! と日経連が大英断を下した事を受けてつけられました。

68年6月に創刊した『就職ジャーナル』は、大学生向け月刊就職情報誌として人気を博した雑誌です。版元のリクルート社は、80年2月には女性のための転職情報誌『とらばーゆ』を創刊するなど、時代の機微を的確に捉え、読者に役立つ情報を発信し続けました。いわば、就活生の指南書であり、役立つガイダンスだったのです(学生の就職活動・企業の採用活動はWebを通じたコミュニケーションが一般的になり、2009年2月28日発売号をもって休刊に)。

その『就職ジャーナル』が、大見出しを打った! そうです。97年は、就職活動の歴史的転換期となる……はずでした。

学歴主義の歴史は明治時代にまでさかのぼる

『就職ジャーナル』の大見出しがいかにすごいニュースだったかを実感するには、ちょっとばかり歴史を遡る必要があります。また、100年前? いやいやもっと前です。

明治時代。140年以上前のお話です。実は「学歴主義」はかなりのお年寄り。明治時代に生まれたのです。

明治維新によってつくられた明治政府は近代国家を目指し、フランスの学制にならって近代的学校教育制度を取り入れました。そのトップバッターが、明治10年にできた東京大学です(開成学校と医学校の合併で成立)。その後は、現在東京大学、京都大学、名古屋大学、東北大学、北海道大学、大阪大学、九州大学となっている計7大学の旧帝国大学を頂点とするヒエラルキー型の複線的な学校制度がつくられました。

ここで誕生したのが「学歴主義」。「大学を出たか? どこの大学を出たか?」でその人の評価や社会的地位が決まる、学歴を過度に重視する考え方です。

履歴書
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

学歴主義自体はヨーロッパ産ですが、欧州の学歴主義は官庁でのみ採用されていたのに対し、日本では官庁から企業へ波及しました。名だたる企業が高学歴の者に非常に高い賃金を支払うようになり、学歴主義が社会に根付いていったのです。