就職協定の廃止は歴史的な英断だったのに…

この脈々と受け継がれる学歴差別を真正面から描いたのが、1983年にTBS系で放送されたドラマ『ふぞろいの林檎たち』です。

ドラマは、「ちょっとだけランクの低い大学生」が就職も恋愛もうまくいかず、自分の大学を名乗ることもできず、居場所を失っていく……というストーリー。学歴主義が生んだ劣等感に多くの人たちが共感し、10年以上続く大人気シリーズになりました。その最終シリーズがスタートした97年4月に、「やっと、本当にやっと学歴主義が終わるんだね!」と社会を喜ばす大英断を日経連が下したのです。

日経連の根本二郎会長(当時)は、53年から40年以上続いた就職協定の廃止を宣言。同時に、企業には「いつ、どのような形で採用活動・選考活動を行うか」の情報の公開を求め、「正式な内定日は卒業・修了学年の10月1日以降とする」と明記した、「採用選考に関する企業の倫理憲章」を制定しました。

これが大きな転機となるはずだった英断であり、「就職協定でブレイク! 『就職自由化』時代がやって来た!」と、『就職ジャーナル』の表紙に大々的な見出しがついた理由です。

「不公平さは消滅する」という確信は裏切られた

当時、『就職ジャーナル』の編集長だった豊田義博氏は、このときの気持ちを次のように綴っています。

「『君たちは、これまでの先輩たちと違って、情報が開かれた公平・公正な環境で就職活動ができるのだ。この素晴らしい変化を活かして納得の行く就職活動をしてほしい』

そんな思いを胸に、私も編集部員も少し興奮しながら本を作っていた」(『就活エリートの迷走』ちくま新書より)

豊田氏は、大手企業や人気の企業の多くがリクルーターを使って、東大、一橋、早慶などの学生にアプローチしていたこと、会社訪問解禁日に会社に行っても採用されるチャンスはほぼなかったこと、就職協定という規制を守る学生=正直者が馬鹿を見る状況がずっと続いていたことなどの“裏側のリアル”を著書で暴露しています。

書類を抱える女性
写真=iStock.com/byryo
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その上で、根本会長の大英断により、就職活動は透明化し、「5年後、10年後には、これまでの歪みや不公平さは、消滅していくにちがいない」と確信したそうです。

が、その確信は見事に裏切られました。「学歴社会はなくなる!」と豪語した人たちの予測は、まったく当たりませんでした。