警戒すべきなのはヤリモクだけではない

駅に戻るまでは冷静だったが、気がついてみると心臓が爆速で打っている。全身が緊張で硬直していたことに気がつく。ユウタさんはマッチングするたびに会って即やってさよならの、鬼畜なヤリモクだったのか。それなら他にも被害者がいるはずだ。

早速調べてみたが運営から強制退会させられた痕跡もない。被害届が出ていないということは、みんな獣医の肩書につられて会ってショッキングな結末だったけど沈黙しているということなのか?

私自身もユウタさんが獣医だから会ったわけだし、心のどこかで悪い人だと思いたくないという抵抗もある。が、現実にはアプリの運営に訴えれば強制退会になるレベルの反則だ(既婚者、性的強制や性暴力、詐欺、誹謗ひぼう中傷や罵倒、いずれも通報すれば強制退会になる)。

マッチング・アプリのプロフィールや自己紹介は、ぱっと見のカテゴライズには便利だが、実は「見せたい自分」として真逆にミスリーディングするケースもあると痛感した。

知っておくべき警戒ポイント初心者に寄ってくる危険な害虫はヤリモクだけではない。ここで注意事項として付記しておく。入会したてでまだシステムがよくわからない時、多くの人が遭遇するのが、投資目的の勧誘や、ロマンス詐欺を仕掛けてくる外国人美女・イケメン写真の詐欺師だ。

男性なら高収入・高学歴、女性は中国系美女に要注意

投資勧誘は大抵日本語が変で、「あなたのことをもっと知りたいです。自分は5年前から日本に移った。日本語はまだ下手です。でも気にしないで」などとフォローが入っていることが多い。そして男性なら職種は経営者や一流企業、年収は「1500万から3000万」。学歴はハーバードとかベルリン自由大学とか取りあえずエリートを騙っとけ、という嘘くささが渦巻いている。

女性は中国系の美女が多い。ロマンス詐欺の場合は、最初はラブラブな恋愛モードだが、途中から「結婚するために日本に行きたいが飛行機代に困っているので200万円振り込んで」というような金の要求にシフトチェンジする。さらに最近は美人局とグルになったぼったくりバーへの誘導や宗教への勧誘など、リスクも増加しているので、くれぐれも騙されないようにしてほしい。

入会してからのいろんな人との突風のような出会いと別れに疲労感を覚えていた頃、「菩薩」というニックネームと紹介文に惹かれて「いいね!」をした。プロフィールにはこんな疲れた心をくすぐる言葉が書き連ねられていた。

「癒し上手です。見た目も中身も菩薩です。迷いや悩みを全部私の心に置いていってください」「あなたの話をカウンセラーのように聞いて癒してあげましょう」「穏やかで決して怒らず、みんなにご利益があるとお賽銭を投げられます」「あなたをすっぽり包み込む包容力、ヒーリング力には自信があります」

菩薩さんのややぽっちゃりな体型も丸顔で温厚そうなルックスも、癒されたい気分がピークだった私には理想的に思えた。

ベッドに横たわりスマホを使用する女性
写真=iStock.com/recep-bg
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